ピエール・フルニエによるバッハの無伴奏チェロ組曲(1959)

好感度 ■■ ■ ■ ■ 1959年のジュネーブでのライブ録音。放送局の録音で、モノラルながら鮮明。 フルニエは、翌1960年に、同曲をセッション録音している。 録音時期が近いだけあって、フルニエが描き出す作品像は似通っている。 :::::::::: メインのフレーズをくっきりと流暢に浮かび上がらせる一方、サブの音は簡潔に軽く扱っている。 コクはあるけど粘らないみたいな、この人一流のセンスの良い歌い回しは、ここでも味わえる。 ただ、生演奏ということなのか、セッション録音と比べると、歌い方に熱がこもっている。髪を振り乱すような情熱的な所作ではないものの、演奏者の投入感は如実。 もともと熱さが“売り”の演奏者ではないと思うので、この熱気をどう聴くかは人それぞれだろうけれど。 それはそれとして、セッション録音では整えようとする演奏者の意識を感じたけれど、こちらでの弓使いはもっと思い切りが良い。両者を比較すれば、こちらの方に好感した。 :::::::::: もっとも、音楽の流れをスッキリと処理する演奏スタイルのせいで、他のすぐれた演奏と比べて、多彩さという意味では弱い。 チェロという渋くて、独奏するには何かと不自由な楽器を、どこまで豊かで多彩に響かせることができるか、という視点で聴くと、この演奏スタイルは分が悪い。