ティーレマンによるワーグナー楽劇『ワルキューレ』(2011年)

2011年、ウィーン国立歌劇場でのライヴ録音。『ニーベルングの指環』全曲録音より。 ティーレマンには、2008年バイロイト音楽祭でのライブ録音がある。 ちなみに、ティーレマンは、同音楽祭で 2006年〜2010年まで『ニーベルングの指環』を担当した。 :::::::::: 音量レベルが低く、ステージやオーケストラが遠い録音。 粘度が高く透明度の低いサウンドは、心地よいものではない。 ウィーン国立歌劇場の音響を、それらしく捉えようと試みているのかもしれない。 だとしても、わたしの再生装置では、ありがたみはなさそう。 :::::::::: 演奏会場の響き方とか、オーケストラの持ち味とか、聴衆の好みを考慮してのことか、ティーレマンの作り出す音楽は、円満でふくよか。そして、スケール感は控えめ。 ところどころ凄みを効かせるけれど、ごく瞬間的。 あくまでも、ブレンドされた角のないサウンド、上品で流暢に進行が際立つ。 もちろん感情表現も控えめ。 告別~魔の炎の音楽の流れも、終始おっとりと品が良い。 おそらく、劇場に身を置いていたら、これでも音響のうねりに酔えたかもしれない。 しかし、音源として聴くと、指揮者の抑制的な姿勢が伝わってきて、こちらも冷めてしまう。 :::::::::: バイロイト音楽祭のライブ録音では、ティーレマンなりに、現代のワーグナー像を表現しているような印象を受けた。 それに対してこちらの音源は、観客の嗜好に合わせて 口当たり良く料理しました、というような仕上がり。 演奏後に盛大な拍手歓声が入っているので、観客は大喜びしたようだが、 わたしはウィーンの人ではないので微妙。