スラドコフスキーによるショスタコーヴィチ交響曲第7番

アレクサンドル・スラドコフスキー指揮タタルスタン国立交響楽団。 2016年セッション録音。 スラドコフスキーは、1965年ロシア出身の指揮者。 2010年よりタタルスタン国立交響楽団の芸術監督に就任。 ちなみに、タタルスタン共和国は、ロシア連邦の構成国。モスクワの東方に位置している。 世界でもっともタタール人が多い国のようだが、オーケストラから異国情緒のようなものは感じられない。 同じコンビで、ショスタコーヴィチ の協奏曲全集も録音している(ソリストは6名)。 -+-+-+-+-+-+-+-+-+-+- 推進力があり、力強くドラマティックな路線。 たとえば、第一楽章中間部の盛り上がりでは、煽り気味にペースアップし、リズムを力強く刻んで切迫感を前面に出している。 ここのテンポを煽るのはありがちだけど、かなり攻めている。スリリングな効果では上位に来そう。 でも、単に劇的、煽りというのではなく、楽曲の情緒的な性格を引き出している。 第3楽章では、思い入れの強さを感じさせる深い息遣い。 第4楽章でも、十分に盛り上げるけれど、それ以上に内省的な深い表情が印象的。戦争の勝利と言うより、内面のドラマが入念に描き出されているかのようにも聴こえる。 けっこう主張の強い表現になっていて、ことに終楽章は粘り過ぎな気がするけれど、真摯な思い入れが感じられる。 -+-+-+-+-+-+-+-+-+-+- シリアスな空気感で、濃いめの味付けではあるけれど、ことさらに息苦しくはない。 どんな場面でも、アンサンブルは一定以上の明快さを保っていて、混濁したり塊状にならない。 初めて聴くオーケストラだけど、派手さ、華やかさは感じないけれど、腰の強い地力を感じさせるアンサンブル。指揮者のドライブ力もあってのことでしょうが、聴き応えありです。 後半の2つの楽章の思い入れの強い演出には、今ひとつノれなかったものの、濃すぎてもたれることはありませんでした。