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ズヴェーデンによるベートーヴェン交響曲第7番(2014年ライブ)

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好感度 ■■ ■■■ ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック。 2014年ライブ録音。 ヤープ・ヴァン・ズヴェーデンは、1960年生まれのオランダの指揮者。 2018年からニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督に就任した。 ちなみに、この音源にはベートーヴェン第5・7交響曲が収録されているが、彼は、同じ組み合わせで2007年にダラス交響楽団とライブ録音している。 また、2002〜2003年に、ハーグ・レジデンティ管弦楽団と交響曲全集を完成している。 今どき、10年弱の期間にこれだけ録音数があるということは、得意なレパートリーなのだろう。 :::::::::: ズヴェーデンの音源は、これまでほとんど聴いていない。交響曲で聴いたことがあるのは、ブルックナーの6番と8番と、ショスタコーヴィチの5番くらい。 ブルックナーではたっぷりとした響と弦楽器主体の表現が印象に残った。 このベートーヴェンの録音も近い印象。ブルックナーだからあんなふうにやっていたのではないようだ。 :::::::::: 誰がやっても響が厚くなるブルックナーと違って、ベートーヴェンだからこそ、低弦部の厚みが余計に際立つ。 厚いだけでなく、広がってオーケストラ全体を柔らかく包む。 それが他のパートの動きを塗り込めることはないけれど、やや靄がかかって、鮮度は落ちる。 聴き手の好き嫌いは分かれそうだが、これがズヴェーデンの好みの響きなのだろう。 ブルックナーのときと違って、ヴァイオリンがぶっちぎりに優位ということはない。どのパートも音の出し方は歯切れよく軽快。 厚い響にくるまれているせいで目立たないけれど、アンサンブルの精度はかなり高い。オーケストラの高性能ぶりがうかがえる。 ただうまいだけでなく、拍単位で表情が適確にコントロールされている。ズヴェーデンが、明確なサウンドイメージを持ち、かつ優れた統率者であることを納得させられる。 トータルで言うと、厚みのある土台の上で、軽快かつ歯切れのよいアンサンブルが展開されているイメージ。 厚めのサウンドゆえに、力強い場面ではそこそこドスが効いているけれど、マスの圧力で押し切ることはない。 :::::::::: 4つの楽章の中では、第三楽章がもっとも楽しめた...

ハイティンクによるブルックナー交響曲第6番(2003年ライブ)

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好感度 ■■ ■■■ ベルナルト・ハイティンク指揮シュターツカペレ・ドレスデン。 2003年11月3日のライブ音源。 ハイティンクは、2002〜2004年にかけて、このオーケストラの首席指揮者を務めた。その頃の録音。当時74歳。 他に、交響曲全集の一環として1970年にコンセルトヘボウ管弦楽団とのセッション録音、2017年にバイエルン放送交響楽団とのライブ録音がある。 録音時期の隔たりはあれど、個人的に好感度トップ3のオーケストラとこの交響曲を録音していることに感心したり。 :::::::::: この交響曲の演奏はけっこう難しいのではないかと思う。技術的ということではなく、魅力的な音楽として成立させることが。 独特のリズムを息づかせながら、ときに荒々しくときに叙情豊かな曲想を過不足なく描き出すのは、難しい気がする。 聴いていて、今ひとつ乗り切れなく感じることが少なくない。 :::::::::: この音源にも、そういうところが無きにしもあらず。 まだ枯れてはいないけれど、リズムの活力は緩めで、もっぱら柔らかく豊かに、そして広々と描き出している。 もたれないギリギリの範囲で、悠々とした足取り。オーケストラのしなやかなアンサンブルもあって、作品書法が香ばしく歌い上げられる。 荒々しくやりすぎて下品になるのは嫌だけど、この演奏は耳のあたりが柔らかすぎるかもしれない。 推進力とか歯切れとかがまるめられているため、この曲の持ち味のすべてをもれなく実感できるような仕上がりではない。 少々偏向しいるけれど、洗練と余裕を感じさせる巨匠の芸をご堪能あれ、みたいな感じ。 :::::::::: ハイティンクは、1970年代までは、ちょっと青臭いときがあるけれど、もっと素直にやっていた。 1980年代以降、巨匠的な風格を身に着け、たぶん声望は高まったけれど、クセの強い音楽をやるようになった。 彼のクセ=芸は柔和で耳あたりが良いけれど、偏向の度合いはけっこう大きい。