ギーレンによるブラームスの交響曲第2番

ミヒャエル・ギーレン指揮南西ドイツ放送交響楽団の演奏。 2005年のセッション録音。 * * * * * 柔軟性のあるフレージングに、自然な推移。ブラームスの重層的な響きを明晰に、しかし慈しむように丁寧に聴かせてくれる。 サウンドの透明度が高く、粘らないので、感触自体はあっさり風味。 この交響曲は、ブラームスの4つの交響曲の中では明朗な方だけど、前半の2楽章には憂愁がそれなりに濃く漂う。 ギーレンは、音楽の息遣いをしっかりと表現しつつ、気分的な要素は漂白している。 おかげで、陰影みたいなものは乏しいけれど、その分聴き疲れはしない。繰り返し聴くための音源としてはなすかなかの佳演。 * * * * * アンサンブルを解きほぐしてしまうのではなくて、響きの重層感を保ったうえで、明晰に聴かせようとしている。 そのあたりは、ラテン系指揮者たちの明晰さとは質が違っている。 オーケストラは、ギーレンの要求に応えて、質のそろったサウンドを生み出しているけれど、洗練度はほどほど。指揮者の方向性を納得させるくらいの力量はあるけれど、鮮度はいまいちか。 第四楽章にあたりでは、明晰さを保ちつつ湧き上がる、みたいにはいかない。指揮者の統率力のせいか、オーケストラの機動力の機動力の限界かは判断できない。 ただ、こういう素朴な味を程よく感じる余地はあると思う。