投稿

12月, 2016の投稿を表示しています

ギーレンによるブラームスの交響曲第2番

イメージ
ミヒャエル・ギーレン指揮南西ドイツ放送交響楽団の演奏。 2005年のセッション録音。 * * * * * 柔軟性のあるフレージングに、自然な推移。ブラームスの重層的な響きを明晰に、しかし慈しむように丁寧に聴かせてくれる。 サウンドの透明度が高く、粘らないので、感触自体はあっさり風味。 この交響曲は、ブラームスの4つの交響曲の中では明朗な方だけど、前半の2楽章には憂愁がそれなりに濃く漂う。 ギーレンは、音楽の息遣いをしっかりと表現しつつ、気分的な要素は漂白している。 おかげで、陰影みたいなものは乏しいけれど、その分聴き疲れはしない。繰り返し聴くための音源としてはなすかなかの佳演。 * * * * * アンサンブルを解きほぐしてしまうのではなくて、響きの重層感を保ったうえで、明晰に聴かせようとしている。 そのあたりは、ラテン系指揮者たちの明晰さとは質が違っている。 オーケストラは、ギーレンの要求に応えて、質のそろったサウンドを生み出しているけれど、洗練度はほどほど。指揮者の方向性を納得させるくらいの力量はあるけれど、鮮度はいまいちか。 第四楽章にあたりでは、明晰さを保ちつつ湧き上がる、みたいにはいかない。指揮者の統率力のせいか、オーケストラの機動力の機動力の限界かは判断できない。 ただ、こういう素朴な味を程よく感じる余地はあると思う。

ヴェンゲーロフ、バレンボイムによるブラームスのヴァイオリン協奏曲

イメージ
協奏曲は1997年のライブ録音。 ヴァイオリンはマキシム・ヴェンゲーロフ、管弦楽はダニエル・バレンボイム指揮のシカゴ交響楽団。 ちなみに、併録のヴァイオリン・ソナタ第3番のピアノもバレンボイム。 * * * * * 趣味の悪いジャケ写への悪印象が先入観になっているかもだが、印象はイマイチ。 不満があるとすれば、管弦楽の方。この曲の場合、管弦楽は伴奏以上の役割を担っている。 原因はわからないけれど、色調が乏しい。オーケストラの持ち味だろうか?技術的にはうまいし、丁寧に演奏されている。 指揮者の音楽性なのだろうか?バレンボイムは、骨太で柄の大きな音楽を要求しつつ、細部の磨き上げも行き届いている。 オーケストラはそれにしっかり応えている。パートの一つ一つはニュアンスを込めて演奏できている。 でも、それぞれのパートがむき出しのままで、ブレンドされないので、無骨で場面による色合いの変化が乏しい。 そのくせ、伴奏らしい控えめさがないので、何かしら気に障る。 併録のヴァイオリン・ソナタ第3番の、バレンボイムのピアノはニュアンス豊かで好印象。ということは、管弦楽の響きの作り方がしっくりこないということか? そういう質の音楽を狙ってやっていて、こちらと相性が悪いだけかもしれない。 * * * * * 線の太い安定した美音が特徴で、作品解釈は素直。さすがの安定した腰の強さで、健康優良児的。これといった不満を感じなかった。 ただ、この曲の場合、個人的に、ヴァイオリン・ソロを切り離して評するのは難しい。