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ブレハッチによるショパン前奏曲全集

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ラファウ・ブレハッチのピアノ。2007年のセッション録音。 2005年ショパン国際ピアノ・コンクールで優勝した、ポーランド人ピアニスト。 1985年生まれの若手。 :::::::::: 理知的なスタンス。 響きの量感は控えめで、音の一粒一粒を際立たせて、それらのバランスを精妙にコントロールしている。 微弱音~やや厚めの響き、の幅で演奏されているけれど、その幅を最大限有効活用して、彫りの深い表情を作り出している。 落ち着いた、まっとうな作品解釈だけど、耳をそばだてさせられる。 楽譜に記された音符を、メインのフレーズとサブのフレーズに整理するのではなく、その重ね方にこだわり抜いて、多彩なニュアンスを生み出している。 繊細さを基調としたショパン演奏に、賛否はあるかもしれないけれど。 :::::::::: 変わったことをやっているわけではないけれど、ある程度定説化された作品像を、自分の技術と感性を通して再現しましたというような、うまいけど予定調和的な演奏とは一線を画している。 あらためてショパンの作品書法に意識を向けさせられた。 こだわりの深さが、そのまま演奏に反映されている感じで面白い。

スクロヴァチェフスキによるブルックナー:交響曲第5番(1996)

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スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮ザールブリュッケン放送交響楽団。1996年のセッション録音。 :::::::::: たぶん、原因は指揮者にあると思うけれど、個々のパートを鳴らしわけるところまではできているのだが、それらのバランスを細かく調整して、一体のものとして織り上げていく、というところまでは、及んでいない。 そのために、サウンドイメージが常にもやっとしている。聴かせどころとなるべき場面のいくつもが、今一つ冴えない。 演奏の格は、1~2段落ちる印象。 ただし、曲がベートーヴェンとかブラームスだっからともかく、ブルックナーだと何とかなってしまう。 ブルックナーの音楽では、アンサンブルを織り上げる細やかさより、個々のフレーズの雄弁さとか、響きの量感のコントロールなんかの方が、らしさに貢献しがちだから。 この演奏では、息の長い歌い回しとか、堂々とした造形とか、恰幅の良い響きとかは、おそらくブルックナーに合っている。 :::::::::: スクロヴァチェフスキの、オーケストラをかき鳴らす力量には物足りなさを感じるけれど、楽曲の把握には手ごたえを感じる。 特に、終楽章では、巨大な音楽が確かな足取りで構築されていく感覚が、しっかりと伝わってきた。 もともと、この指揮者には、洗練された演出は無理っぽいけれど、その分、よそ見しないで、この楽章の造形美を納得させてくれる。 ちなみに、終楽章のフィナーレに、ちょっとしたサプライズ(改変)がある。