スクロヴァチェフスキによるブルックナー:交響曲第5番(1996)

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たぶん、原因は指揮者にあると思うけれど、個々のパートを鳴らしわけるところまではできているのだが、それらのバランスを細かく調整して、一体のものとして織り上げていく、というところまでは、及んでいない。
そのために、サウンドイメージが常にもやっとしている。聴かせどころとなるべき場面のいくつもが、今一つ冴えない。
演奏の格は、1~2段落ちる印象。
ただし、曲がベートーヴェンとかブラームスだっからともかく、ブルックナーだと何とかなってしまう。
ブルックナーの音楽では、アンサンブルを織り上げる細やかさより、個々のフレーズの雄弁さとか、響きの量感のコントロールなんかの方が、らしさに貢献しがちだから。
この演奏では、息の長い歌い回しとか、堂々とした造形とか、恰幅の良い響きとかは、おそらくブルックナーに合っている。
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スクロヴァチェフスキの、オーケストラをかき鳴らす力量には物足りなさを感じるけれど、楽曲の把握には手ごたえを感じる。
特に、終楽章では、巨大な音楽が確かな足取りで構築されていく感覚が、しっかりと伝わってきた。
もともと、この指揮者には、洗練された演出は無理っぽいけれど、その分、よそ見しないで、この楽章の造形美を納得させてくれる。
ちなみに、終楽章のフィナーレに、ちょっとしたサプライズ(改変)がある。
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