フィリップ・ジョルダンによるベートーヴェン交響曲第5番(2017年)

フィリップ・ジョルダン指揮ウィーン交響楽団。 2017年のライブ録音。 フィリップ・ジョルダンは1974年生まれのスイス出身の指揮者。父は指揮者のアルミン・ジョルダン(1932 - 2006)。 2014〜2020年にウィーン交響楽団の首席指揮者を務めた。 ちなみに、2020年からはウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任。 :::::::::: 軽快で、颯爽として、色彩豊かな演奏。若々しくてかっこいい。 推進力に富むけれど、流す感じは一切なく、個々のパートの動きや色合いが鮮明に聴き取れる。 各パートは軽い音の出し方で、艷やかで耳あたりが良い。 軽量級サウンドにしまった造形の組み合わせだけど、キツイ響きは皆無。終始、華やかで潤いがある。 楽譜に記された音符を、もれなくスムーズに心地よく表現することに重きを置いている分、音楽の表情に誇張とか歪みはほとんどない。描き出される作品像はオーソドックス。 :::::::::: ドラマ性とか、雄弁さとか、語り口の妙みたいなものを期待すると、物足りないかもしれない。 たぶん、もともとジョルダンはそういうことを狙っていない。そういう方面での思い入れは伝わってこない。 でもそれはいい。 この曲は、演奏者が仕掛けなくても、楽譜を誠実に掘り起こせば、自ずから効果が発揮されるように作られている。 ジョルダンのような曲との距離感は“あり”だと思う。 ただ、その一方で、快適さや耳あたりの良く演奏することには、きわめて能動的。意を注いでいるし、成果も上がっている。 この演奏から伝わる彼の姿勢は、ちょっと軟派に感じられなくもない。