ズヴェーデンによるベートーヴェン交響曲第5番(2015年ライブ)

好感度 ■■■■■
ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック。
2015年ライブ録音。併録の第7交響曲は、この前年のライブ録音。
ヤープ・ヴァン・ズヴェーデンは、1960年生まれのオランダの指揮者。
2018年からニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督に就任した。
ちなみに、この音源にはベートーヴェン第5・7交響曲が収録されているが、彼は、同じ組み合わせで2007年にダラス交響楽団とライブ録音している。
また、2002〜2003年に、ハーグ・レジデンティ管弦楽団と交響曲全集を完成している。
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併録の第7交響曲と録音の音質傾向は似ているが、比較すると、こちらの方が低音がいくぶん締まっている。
その分、聴き応えは高まっている。
個々のパートは、軽くて敏捷。それぞれの連携が良く互いを引き立て合う。
場面場面の表情が決まっていて、それがしなやかに移り変わっていく。
暗から明へのドラマ性より、アンサンブルの洗練と精度、そこからくる爽快さ・小気味良さを前面に打ち出している。
厚みのある低音が、それらの土台となり、また柔らかく包み込む。
そのおかげで、音の出し方は軽いけれど、量感のあるサウンドに仕上がっている。
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この低音のボリーム感が独特で、普通に考えると過剰気味。精密なアンサンブルをやりながら、包み込む量感のためにサウンドの色彩感は弱められ、表情の彫りは浅く聴こえる。
しかし、それを欠点としてではなく個性と感じさせる。
上で触れた録音もそうした印象に寄与している。
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たとえば、第四楽章の輝かしい冒頭部分は、そこそこ厚く響くけれど、熱気や高揚感は皆無。
しかし、盛り上がらないかというと、そんなことはなく、軽快で切れのあるアンサンブルが、次々と表情を決め、目まぐるしく変転し、楽しませてくれる。
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