ケーゲルによる、ブルックナーの交響曲第5番

ライプツィヒ放送交響楽団との、1977年ライブ録音。 曲調の変化に合わせてテンポは柔軟に変えられるけれど、全体として、もったいぶらず、推進力を感じさせる。 サウンドは、重厚感や壮大さより、明晰さが重視され、ときに繊細さが際立つ。 * * * * * こういうやり方なので、終楽章あたりは、他の演奏と比べると、快速かつ軽量級となる。 この終楽章は、凝った仕組みだし、細部に目をやると変化に富んでいる。そのあたりを強調(?)するような演奏で聴くと、山あり谷ありの大掛かりなドラマのように聴こえなくもない。 ただ、この演奏のように、高い推進力でもって演奏されると、一定の調子で突き進んでいく印象。多少、あっけなく感じられる。 だからと言って、ケーゲルのようなやり方が劣っているとは、一概には言えない。ケーゲルのやり方だと、終楽章のウェイトが軽く感じられて、この楽章の聴き応えに限ると、評価が分かれるかもしれない。でも、全四楽章のバランスという意味では、この方が良いと思う。 両端楽章を重厚壮大にやりすぎると、第二楽章のおさまりが微妙になってしまう。この楽章は、ブルックナーの書いた緩徐楽章の中で、目立って簡潔に作られているから。 第二楽章が不出来なわけではなく、全四楽章が適切なバランスで作曲されているとするならば、ケーゲルのような演奏設計の方が、ブルックナーの意図に近いような気がする。 ただ、どのやり方を魅力的と感じるかは、聴き手の自由だけど。 * * * * * 楽曲の繊細な美しさを、クールな質感で描き出した第二楽章が印象的。 高音域優位の、透明度の高い響きで、息の長い旋律を次々と流れるように美しく歌い上げていく。演奏者の美意識を感じさせる。 オーケストラの響きが心地よくて、ケーゲルの美意識を体現できている感じ。 第三楽章は、推進力に溢れながらも、曲調の変化に機敏に反応できていて、小気味がいい。技巧的な管弦楽法を明解にしながら、変化の妙で楽しませてくれる。 オーケストラの上手さと柔軟な表現力に感心。 * * * * * 両端楽章は、他の演奏と比べたときに、足取りの軽さとか響きの薄さがいっそう際立つような表現。好き嫌いは分かれそうな気がするけれど、上のとおり、作品解釈としては納得できる。 第一楽章は、もとも...