ヤノフスキによるマスカーニ歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』
マレク・ヤノフスキ指揮ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団、ライプツィヒMDR放送合唱団他。 2019年の録音。 ヤノフスキは、1939年ポーランド出身の指揮者。ただし、ドイツで育ったようだ。 彼は、2001〜2003年にこのオーケストラの首席指揮者を務めたことがあるが、2019年に返り咲いている。 劇場経験豊富なヤノフスキがこの作品を指揮できて、何の不思議もないけれど、一般論としては、このベタなイタリア・オペラとの取り合わせには、異質な印象がある。 が、この曲は好きだけど、基本イタリア歌劇を苦手とする当方にとして、むしろベタベタしていないところに期待。 *-*-*-*-*-*-*-*-*-* 演奏の味わいとしては、ヤノフスキのワーグナー演奏あたりの印象に近い。 聴手を煽るのではなく、冷静な手さばきで作品書法を明解に描き出す。サウンドはどのパートも均質で、逆に言うと色彩感は乏しい。 リズムの処理は清潔で、コブシを振り回すことはないけれど、歌わせるべき箇所では旋律線をしっかり際立たせる。 緩急や剛柔の振れ幅はけっこうあって、しかも切り替えが機敏。 とくに激しい部分でのオーケストラのコントロールには舌を巻く。明解さを保ったまま、スリリングにドライブする。通常の場面では控えめに支える低音パートも、透明度を保ったままモリモリと高まる。 しかし、オーケストラの動きは機敏で、後にひかない。 地味な技だけど、ヤノフスキのこういうところは好み。 *-*-*-*-*-*-*-*-*-* 全体としては、雄弁に柔軟に歌手たちをエスコートしているけれど、感情表現には深く入りこまない。 ドラマ的な側面を尊重しつつも、歌唱陣、オーケストラ、合唱団をひっくるめた、全体のアンサンブルの作り込みにも目を光らせている。 これが、この指揮者のいろいろな距離感なのだろう。 歌唱陣は、演技とかキャラ作りの成否はともかく(というか、そういうことに関心がないので・・・)、素直で明瞭な歌唱。 この演奏にふさわしい人選と思われ、気持ちよく聴き通せる。