レーピンによる、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲

ヴァディム・レーピンのヴァイオリンのソロ、管弦楽はリッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。 2007年のセッション録音。 * * * * * 磨き上げられた技巧と、こだわりぬかれた作品解釈が、ある意味スタイリッシュに表現されている。 丹念に楽曲をトレースする、というレベルから一歩踏み込んで、作曲家が込めたであろう心の震えみたいなところまで洞察し、描き出していく。細やかな襞にまで光を当てる感じ。 当然、そこにレーピンの感性が入り込むので、賛否は分かれかねない。 ただ、彼の演奏能力とか表現力の高さは否定できないだろう。 他のヴァイオリン奏者が、何回かに一回しか成功できないような細やかな技を、余裕をもって計算通りにこなしているように聴こえる。 音楽の細かな襞に分け入るような演奏だけど、その手並みはあくまでもスタイリッシュ。演奏様式としての一貫性とか洗練が徹底されている。精密にコントロールされた技とか、くすみなく透明な響きとか。 * * * * * ムーティは、音楽の精気を削いでまでも、整えて磨き上げるスタイル。情動めいたものを感じさせない、無味無機質なタッチ。