ベル、イッサーリスによる、ブラームスの二重協奏曲

2016年のセッション録音。
ベルのヴァイオリンを聴くのは初めてで、彼がアカデミー室内管弦楽団の音楽監督をやっていることを知らなかった。
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この協奏曲には、個々のソリストの見せ場はない。聴かせどころとしたら、息の合ったコンビネーション、ということになると思う。
ただ、わたしが聴いた範囲では、指揮者が出しゃばりすぎる音源が多くて、ソリストは霞みがちになることが多い。
その点、この音源では、ヴァイオリン・ソロを務めるベルがオーケストラをコントロールしているので、二人のソリストの表現や対話を堪能しやすい。音としてよく聴きとれるし、主導権をソリストが握っている。
逆に言うと、室内楽的な響きに近くなって、サウンドイメージはこじんまりとするけれど、個人的には、このあたりが適正なバランスのように感じられる。
この点が、わたしにとっての、この音源の魅力。
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ただ、管弦楽にはいささか疑問符が。
アカデミー室内管弦楽団というと、マリナーの演奏の印象しかない。マリナーがこのオーケストラから引き出すサウンドは、好みではなかったけれど、締まりがあって、指揮者の確かな統率が感じられた。
それに比べると、この音源の管弦楽には、イマイチ締まりがない。技術的な巧拙というより、芸を感じられない。表現したいサウンドイメージがはっきりとしない。
伴奏とは言え、この曲のオーケストレーションは、ブラームスの管弦楽法の最終到達点だから、指揮者にもオーケストラにも厳しい。
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