ラインスドルフによるワーグナー楽劇『ワルキューレ』

エーリヒ・ラインスドルフ指揮ロンドン交響楽団。
1961年のセッション録音。
興味深いことに、ビルギット・ニルソンがブリュンヒルデを歌っている。
彼女は、翌年のショルティの同曲のセッション録音でもブリュンヒルデを演じている。
ちなみに、ジークムントをジョン・ヴィッカーズ、ヴォータンをジョージ・ロンドンが歌っている。
ラインスドルフは、1912年ウィーン出身で、後に米国に帰化。
メトロポリタン歌劇場でワーグナーを多く手がけたらしい(1940年の正規ライブ録音が残っている)。
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透明度と精度の高い管弦楽。重層感や厚みは控え目だけど、スケールは豊か。低音パートを厚ぼったくしないで、サウンドに広がりを与えるようにスッキリと響かせている。
端正な路線だけど、ケレン味が多少はあって、聴かせどころでメインのフレーズを際立たせたり、ヴァイオリン・パートをそこここで煌めかせたり、とかの芸を聴かせる。
効果的と感じるかは人それぞれだろうけれど、堂に入っていて、この大作を掌握している感じがある。
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精緻なアンサンブルだけど、それによってすべての音符のニュアンスを浮き彫りにする、というようなアプローチではない。
ヴァイオリン主体に表情を作り上げる一方、低音パートは量感として淡白に表現されていて、線の輪郭は淡いし、色合いの変化とかは希薄。
その分、音楽の密度が薄まって、コクとか陰影のようなものが乏しくなっている。
アンサンブルはクリアだけど、だからと言って情報量が多いわけでもない・・・みたいな。伴奏と割り切って聴くにはちょうど良い具合だけど、それを超える要素は乏しいかも。
指揮者が自己顕示欲を全開にしている演奏よりは、好ましいかもしれない。
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ビルギット・ニルソンの歌唱は、落ち着いている印象。管弦楽が端正なタッチなので、そっちに方向に引き寄せられたのか?
声の威力や熱気はさほど感じないが、普通に良い歌唱。
ジョージ・ロンドンもそんな感じだろうか・・・
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