アリサ・ワイラースタインによるバッハ無伴奏チェロ組曲第6番

2019年セッション録音の全曲盤から。

彼女は、1982年米国生まれのチェロ奏者。

過去のレコーディングの中では、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲の録音を聴いたことがあった。

しかし、曲自体をよく知らないので、その録音でもってどうこう言うのは無理だった。

では、バッハの無伴奏だったら、チェロ奏者について語れるかと言われると、それも厳しい。

この組曲集の中で、6番を偏愛しており、これを聴けば、自分なりに演奏者の傾向をつかむことはできる。

ただ、それでチェロ奏者を評価するのは難しい。

バッハの無伴奏は多くのチェリストが録音しており、レベルが高い。いつ頃からかはわからないけれど、知る限りここ30年くらいの録音は、カザルス並の演奏ならザラにある。

その中で好き嫌いを言うことはできるけれど、優劣を言うのは手に余る。
本人は優劣を言っているつもりでも、単に好みを語るだけになってしまいそう。


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ワイラースタインの表現は幅広いけれど、全体にテンションは抑え気味。力強さは控えめ。

そのかわりに、 滑らかで能弁。

というか、この滑らかさは、単なる傾向ではなく、技巧が巧拙を云々される次元を超えて、音楽表現に昇華されているようなレベルのもの。
表現にも音にも雑味がない。

とても高いレベルの技巧とセンスで演奏されいるのはまちがいなさそう。


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ただ、1曲めから多少落胆したことは否定できない。
この曲では、一挺のチェロで演奏しているとは思えないような、雄渾な広がりを期待するのだけど、そういうのは無い。

こじんまりとして線の細い演奏というのではないけれど、技巧的にも表現としても、洗練させることが最優先。
1曲1曲の味わいを堪能させる、みたいな趣向ではない。 

もっとも、バッハの無伴奏はさんざん聴かれてきた楽曲なので、今さら曲の持ち味に軸足を置くアプローチは取りにくいだろう。
ワイラースタインらしさを発揮することに軸足を置くのは、適切な選択なのだろう。他の演奏を見渡しても、そういうのが多いし。

とはいえ、 かなりワイラースタインの持ち味に寄せた音楽にはなっている。

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