シェリング、ハイティンクによるブラームスのヴァイオリン協奏曲

ヘンリク・シェリングのヴァイオリン独奏、ベルナルト・ハイティンク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団。1973年のセッション録音。

シェリングの、この協奏曲のセッション録音は、モントゥーとの協演(1958年)、ドラティとの協演(1962年)の2つがある。他に、クーベリックとのライブ録音(1967年)があるようだ。

ここでとり上げている、ハイティンクとの協演盤は、シェリング54歳の録音。ソリストとして、若くはないが、耄碌するほどでもない、という微妙な年齢。

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この音源は、シェリングに焦点を当てると、彼の最善ではないかもしれない。端正で品位があるけれど、軽めで淡白。
練られていて心地よいけれど、聴いていてテンションが上がる演奏ではない。

一方のハイティンクは録音当時44歳。1980年代に入って風格を増すけれど、この録音の頃は、まだ押し出しが弱い。

特にこの音源では、名ヴァイオリニストとの共演ということもあってか、良くも悪くもお行儀よく振る舞っている。

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老成の気配が漂い始めたシェリングに、若輩ゆえの押しの弱さがあるハイティンクと、個々に聴くと、この二人の最善の姿ではないかもしれない。

しかし、この組み合わせが、絶妙な味わいを生み出している。
古き良き欧州の香り、みたいなものが色濃く漂ってくる。演奏自体は軽めのタッチだけど、その根底に練り込まれた技と美意識を感じる。

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かつては1980年より前のハイティンクの音源を軽視していたけれど、最近は、好みが逆転している。巨匠風の空気をまとう前のハイティンクの方が好ましい。

力のあるオーケストラと、ポテンシャルは高いけれど余計なことをしない指揮者の組み合わせって、しっくりくる。

ここでの伴奏は、自己主張控えめだけど、楽曲を整ったフォルムで描き出しつつ、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の持ち味を引き出して、品良く、耳あたり良く、端整に仕上げている。

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