ダニエーレ・ガッティによる、ベルリオーズの幻想交響曲

ガッティは、2016年9月にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の第7代首席指揮者に就任。その半年ほど前のライブ録音。
ガッティは、バイロイト音楽祭での『パルジファル』の放送音源を聴いたことがある。
ただでさえ長大な『パルジファル』を、遅いテンポで、コッテリと仕上げていた。そのときは、食傷した。
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コッテリとした音楽は、この音源でも共通している。これがこの指揮者のテイストのようだ。
フレーズを深く息づかせているから、遅めのテンポに必然性はある。
もともと、このオーケストラ(コンサートホール?)の持ち味の一つが豊かな響きだから、ディテールの表現を浮き立たせるのに、ふさわしいテンポと感じられる。
作り込まれた濃い表現。入念に艶めかせ、しなを作る。とりわけ、高弦のしなやかさが印象的。
そこにはガッティの嗜好が色濃く反映されていて、常に濃厚な空気が立ち込めている。
曲調の変化にかかわらず、演奏の持つ佇まいは一定しているというか、どちらかというと変化は乏しい。
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第2楽章のしなやかな軽快感は心地よい。
第3楽章は、ややもたれ気味だけど、聴き応えは大きい。この演奏の山場と言えそう。
それに続く、第4、5楽章は、はじけないどころか、コッテリ艶やかに塗りたくられた。
楽曲の味わいが、指揮者の美意識で覆いつくされたような印象。
指揮者の確固たるスタイルと、それを実現できる力量は確かなものだけど、演奏者のエゴが強く出ているので、聴き手を選びそう。
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