クレンペラーによるブルックナー交響曲第5番(1967)


オットー・クレンペラー指揮、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団。

1967年のセッション録音。

 知っている範囲で、クレンペラーの同曲の録音は他に、1957年アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団とのライブ、1967年ニュー・フィルハーモニア管弦楽団とのライブ、1968年ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのライブがある。

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全曲通して、もたれない程度に悠然とした歩調が一貫している。
その上で、次々繰り出される多彩なモチーフを、リズム感とか歌い回しの変化で描き分ける。

そして、密度感のあるサウンド。低音厚めのサウンドバランスだけど、リズムの刻みを聴き取れる明確な低音。
アンサンブルの明晰さが重視されており、幻想的だとか、宗教的だとかの雰囲気作りはやっていない。

作品造形としては、滅多にないくらい堅固で硬派。ただし、息苦しさのようなものは感じられない。
たぶん、乾いた感触ながら、広がりと見通しの良さを兼ね備えた響きのおかげ。

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曲調の変化に反応しない歩調などは、武骨な印象につながりやすいけれど、アンサンブルはきめ細かくコントロールされている。それぞれの線の動きは明瞭で、音のつながり方や重なり方は念入りに表出されている。

明晰さだけなら、他に優れた演奏はいくらでもある。
クレンペラーの真骨頂は、明瞭な発音で、個々のフレーズを彫り深く、陰影深く形作るところ。一定した歩調で淡々とした進行だけど、アンサンブルは雄弁。

そのせいで、もっばら理詰めで作品にアプローチしているようでありながら、感情表現を強く意識させられる。
そうした作法は、ブルックナーの交響曲の中でも、特にこの曲と相性が良いようだ。

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