サロネンによるベートーヴェン交響曲第3番『英雄』(2018年ライブ)
好感度 ■■■■■
エサ=ペッカ・サロネン指揮シンフォニア・グランジュ・オ・ラック。
2018年ライブ録音。
サロネン1958年生まれの、フィンランドの作曲家・指揮者。
録音当時はフィルハーモニア管弦楽団の首席指揮者。
ちなみに、フィルハーモニア管弦楽団との契約は2021年までで、その後はサンフランシスコ交響楽団の音楽監督が予定されているらしい。
一方のシンフォニア・グランジュ・オ・ラックは、毎夏フランスで開催される音楽祭「ランコントル・ミュジカル・デヴィアン」専用オーケストラのようだ。
この音源は、それの結成記念コンサートとのこと。
響きの良いホールの中での、編成の小さなオーケストラによる演奏。そのことが、本質的な影響を及ぼしているようだ。
サロネンらしい軽快で颯爽とした演奏スタイルだけど、ロス・フィルやフィルハーモニア管との録音とは、印象が異なる。
ロス・フィルやフィルハーモニア管との録音を聞くと、サロネンはオーケストラから、端整で機能的なアンサンブルを引き出していたようだが、推察されるだけで、実感として感じ取りにくかった。
というのは、この指揮者は、機能美と同じくらい、彼は力感とかボリューム感も重視するので、しばしばディテールが糊塗されてしまうから。
個人的に、精細さと力感とのバランスの難しさを、この指揮者の演奏スタイルから感じていた。
それが、演奏空間とオーケストラが小さくなったことで、この音源では解消されている。
オーケストラが小さくなったために、音響の圧力が弱くなる。それを埋めるように、表現の振幅を強めている。
第一楽章では、もともとスポーティなくらい颯爽とした歩調だったが、展開部の頂点に差し掛かると、さらにテンポを追い込む。
第二楽章は緩急の幅が大きく、場面に応じて個々のパートを浮き上がらせる。
ベースがスッキリ爽やか路線なので、濃厚風味にはならないが、かなり雄弁にやっている。
第四楽章でも、変奏ごとのタッチの違いを明確に描き分ける。
この指揮者の演奏は、そこそこ好んでいたけれど、なんとなく「指揮界のイケメン枠」という軽い印象だった。
しかし、この演奏には感服した。
演奏自体には好き嫌い分かれると思う。 オリジナル楽器的なアプローチとは別次元で、軽快かつスポーティだけど、心地良く感じる人もいれば、落ち着き無く感じる人もいると思う。
サロネンの流儀が徹底された演奏スタイルではあるけれど、同時にまた、徹底して作品に語らせるアプローチでもある。
そもそも、サロネンの演奏スタイルは、作品に触れるための規約・手順みたいなもので、楽曲の味わいを侵すことはない。そこは作品に語らせる。
「作品に語らせる」という表現が曖昧だとしたら、サロネンはもっぱら、自身の内から湧き起こる作品への共感とか愛着とか感銘みたいなものを、素直に表出している。そのように感じられる。
溢れる才能で、楽曲を自分好みに染め上げるそこらの俊才たちとは一味違う。
思っていた以上に、好みの指揮者だった。
オーケストラは十分に高性能。有名オーケストラの腕利きたちを集めたらしい。
そして、キレの良いサロネンの演奏と柔らかなホールの音響が、いい塩梅にバランスしている。
エサ=ペッカ・サロネン指揮シンフォニア・グランジュ・オ・ラック。
2018年ライブ録音。
サロネン1958年生まれの、フィンランドの作曲家・指揮者。
録音当時はフィルハーモニア管弦楽団の首席指揮者。
ちなみに、フィルハーモニア管弦楽団との契約は2021年までで、その後はサンフランシスコ交響楽団の音楽監督が予定されているらしい。
一方のシンフォニア・グランジュ・オ・ラックは、毎夏フランスで開催される音楽祭「ランコントル・ミュジカル・デヴィアン」専用オーケストラのようだ。
この音源は、それの結成記念コンサートとのこと。
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響きの良いホールの中での、編成の小さなオーケストラによる演奏。そのことが、本質的な影響を及ぼしているようだ。
サロネンらしい軽快で颯爽とした演奏スタイルだけど、ロス・フィルやフィルハーモニア管との録音とは、印象が異なる。
ロス・フィルやフィルハーモニア管との録音を聞くと、サロネンはオーケストラから、端整で機能的なアンサンブルを引き出していたようだが、推察されるだけで、実感として感じ取りにくかった。
というのは、この指揮者は、機能美と同じくらい、彼は力感とかボリューム感も重視するので、しばしばディテールが糊塗されてしまうから。
個人的に、精細さと力感とのバランスの難しさを、この指揮者の演奏スタイルから感じていた。
それが、演奏空間とオーケストラが小さくなったことで、この音源では解消されている。
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オーケストラが小さくなったために、音響の圧力が弱くなる。それを埋めるように、表現の振幅を強めている。
第一楽章では、もともとスポーティなくらい颯爽とした歩調だったが、展開部の頂点に差し掛かると、さらにテンポを追い込む。
第二楽章は緩急の幅が大きく、場面に応じて個々のパートを浮き上がらせる。
ベースがスッキリ爽やか路線なので、濃厚風味にはならないが、かなり雄弁にやっている。
第四楽章でも、変奏ごとのタッチの違いを明確に描き分ける。
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この指揮者の演奏は、そこそこ好んでいたけれど、なんとなく「指揮界のイケメン枠」という軽い印象だった。
しかし、この演奏には感服した。
演奏自体には好き嫌い分かれると思う。 オリジナル楽器的なアプローチとは別次元で、軽快かつスポーティだけど、心地良く感じる人もいれば、落ち着き無く感じる人もいると思う。
サロネンの流儀が徹底された演奏スタイルではあるけれど、同時にまた、徹底して作品に語らせるアプローチでもある。
そもそも、サロネンの演奏スタイルは、作品に触れるための規約・手順みたいなもので、楽曲の味わいを侵すことはない。そこは作品に語らせる。
「作品に語らせる」という表現が曖昧だとしたら、サロネンはもっぱら、自身の内から湧き起こる作品への共感とか愛着とか感銘みたいなものを、素直に表出している。そのように感じられる。
溢れる才能で、楽曲を自分好みに染め上げるそこらの俊才たちとは一味違う。
思っていた以上に、好みの指揮者だった。
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オーケストラは十分に高性能。有名オーケストラの腕利きたちを集めたらしい。
そして、キレの良いサロネンの演奏と柔らかなホールの音響が、いい塩梅にバランスしている。
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