ネルソンスによるベートーヴェン交響曲第7番

アンドリス・ネルソンス指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。

2017年ライブ録音。
2020年はベートーヴェン生誕250年に当たるそうだ。それに向けて制作された全集からの一枚。


ネルソンスは、1978年ラトビア出身の指揮者。ということは、この録音の頃は30代終盤。


この若さで、現在ボストン交響楽団の音楽監督とライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の楽長(カペルマイスター)を務めている。

しかも、 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とも良好な関係を築いているようだ。
 

 
これは期待を上回る好演。

ネルソンスという指揮者の“らしさ”はあって、本場の味わいそのまんまではないけれど、正攻法のアプローチで、過不足なく楽曲の持ち味を引き出している。

 これまで、彼のショスタコーヴィチとか(ボストン交響楽団)、ブルックナーとか(ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団)を聴いたときは、上手さに感銘したけれど、心を動かされることはなかった。

 まっとうで丁寧な音楽をやる人だけど、サウンドとかアンサンブルに対する意識の強さが剥き出しで、生気とか色彩が乏しい印象だった。

でも、バイロイトでのライブ録音(ローエングリン)は、もっと好ましかった。ベースの部分はネルソンス流だけど、神経質にならないで、音楽の自然な勢いを引き出していた。
歴史ある音楽祭という状況が何か影響していたかもしれない。

 

このベートーヴェンは、端整な弦の動きとかほのかに清涼感を帯びたサウンドあたりにネルソンスらしさを感じさせるけれど、自然な勢いや流れとか、伝統的な楽曲イメージなとじも十分に尊重されている。

 たとえば、第二楽章あたりでは、コクとか粘りより、涼やかな繊細感が勝っていて、ヨーロッパの寒い国の香りがする。
しかし、後半2楽章になると、オーケストラのコクと厚みを活かしつつ、沸き立つような爽快な演奏に仕上がっている。キレの良さはネルソンスの持ち味だろうが、それも含めてとにかく良いバランス。


そして、精度と勢いや力感とを両立させるネルソンス手綱捌きは素晴らしい。
指揮者としてのキャラの表出は控えめだけど、控えめながら彼らしさは隅々にまで浸透していて、アンサンブルを掌握している。少なくとも、オーケストラに任せという感じではない。
質の高い本格派の演奏だと思う。

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