ヤンソンスによるブルックナー交響曲第8番

好感度 ■■■■■
マリス・ヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団。
2017年11月のライブ録音。
ヤンソンスは、1943年にラトビアで生まれ2019年に亡くなった指揮者。
2003年から亡くなるまで、このオーケストラの首席指揮者の地位にあった。
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この指揮者の演奏の特徴を、短い言葉で的確に説明するのは難しい。
この音源も然り。
ヤンソンスは、自分の美学の中にオーケストラを巻き込むタイプの指揮者ではなく、オーケストラとともに音楽を作り上げてく感じがある。
ただそれは、弱腰とか妥協とかではなく、演奏としては一貫しているし、品質にもこだわっている。
処世術の範囲を超えて、音楽とか共演者とのかかわり方が柔軟で協調的なのかもしれない。
この演奏からも、そのような印象を強く受けた。
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全体として、ドイツ風のブルックナーという感じではないけれど、ある部分ではもの凄く本場っぽい質感がある。
ヤンソンスは、オーケストラの機能的でありながら耳当たりの柔らかいサウンドを存分に引き出していて、そのことが音楽をスムーズに心地よく響かせている。
低音すっきりのバランスなので、圧力はさほどではないけれど、スケール感は必要十分。
テンポは心持ちゆったりだけど、豊かなサウンドを活かすために適正と感じられる歩調で、もたれたり重くなることはない。
この指揮者らしく感じたのは呼吸感。
場面に応じて呼吸の深さを変えるけれど、変化の幅は控えめ。
ゆったりと量感を込めて歌われる場面でも、肚の底から溢れ出るような深い呼吸にはならない。
呼吸の深浅の対比を大きくすることは、造形を大きくゆがめることにつながる。そういうところでは、造形の端正さの方を重視しているように聞こえる。
ドラマティックさとか迫力を求めると、物足りなさが残るかもしれない。
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自然体でピュアなアプローチだと思う。
演奏としての基本ルールをしっかり決めたら、後は極力演奏者の匂いを出さず、楽曲に自らを語らせるようなスタンス。
第1楽章や第4楽章は、曲自体に作曲者の力みが表れているから、もっと煽ってくれた方がらしく聴こえるかもしれない。
でも、第3楽章の素直で晴朗な味わいは殊の外気持ち良かった。
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