テツラフによる、シベリウスのヴァイオリン協奏曲

クリスティアン・テツラフのヴァイオリン、管弦楽はトーマス・ダウスゴー指揮デンマーク国立交響楽団。
テツラフは、1966年生まれのドイツのヴァイオリン奏者。一方のダウスゴーは、1963年生まれのデンマークの指揮者。
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テツラフのフレージングは、緊張感があって、緩急の落差がある。これだけを取り上げると、ドラマティック指向。
しかし、響きはスッキリとシャープで、線の動きが明解。だから、ドラマティック風でありながら、暑苦しさや粘っこさは無い。
こういう持ち味の演奏家なのか、シベリウスだからこうしているのか、現時点では判断できない。
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シベリウスのいろいろな持ち味に目配りした表現ともとれるが、どこかしら中途半端にも聴こえる。
ドラマティックな演奏として聴こうとすると、攻め切れていないようにも聴こえてしまう。
たとえば、第二楽章は、想いの高まりを聴かせるような息遣いと、精妙な響きの組み合わせで、どちらの要素もこの楽曲らしいのだけど、どっちつかずになっているような。
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あるいは、テツラフ個人の表現が中途半端なのではなく、管弦楽との兼ね合いでそのように聴こえるのかも。
ダウスゴー指揮の管弦楽は、ごく素直に盛り上げている。伴奏としては十分な働きだけど、テツラフが精妙な表現に傾く場面でも、あんまり付き合わないで、自然体で進めてしまう。
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というように、聴き終えてスカッと喝采できる演奏ではなかったけれど、テツラフのヴァイオリン演奏そのものは好印象。
少なくとも、自分の力量をアピールするために楽曲を料理する式の演奏ではない。作曲者の意図とかに思いを至らせてくれる、まっとうなアプローチだし、それだけの表現力を感じさせる。
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