シャハム、シリーポリによる、シベリウスのヴァイオリン協奏曲

1991年のセッション録音。
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この曲らしさ、という角度から聴くと、賛否が分かれそうな演奏。
少なくとも、北欧の抒情的なテイストは、独奏にもオーケストラにもない。
シャハムのヴァイオリンはクッキリと明確な線だし、管弦楽は明るい色彩を振りまく。
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それでも、ヴァイオリン協奏曲の演奏としては、ハイグレードな演奏だと思う。
そして、この演奏を他より一段上にしているのは、独奏と管弦楽のコンビネーションの良さ。
シノーポリの管弦楽は、ただ背景でソリストを修飾しているのではない。北欧の抒情とかそっちのけで、シベリウスのオーケストレーションのメカニズムを、白日の下にさらす。即物的に響く一歩手前くらいまで追い込んでいるけれど、明るく艶のあるサウンドのおかげで、無機質なタッチにはなっていない。
そして、シベリウスのこの曲のオーケストレーションは、そりなりに密度が濃いようで、シノーポリのやり方はそれなりに栄えている。
こんな伴奏だから、独奏が甘さや気分に流れては、様にならない。
その点シャハムは、管弦楽に見合う明解さと精度を聴かせつつ、そのうえで自分の存在感を発揮している。
張りのある流麗さの中に、彫りの深さを織り込んだ、訴える力の強いヴァイオリン独奏。
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