シューリヒトによるブルックナー交響曲第5番(1962)

カール・シューリヒト指揮、シュトゥットガルト放送交響楽団。

1962年のライブ録音。モノラルながら、放送局の録音らしく極めて鮮明。

この曲のシューリヒトの音源としては、1963年のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との録音がある。

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シューリヒトは1880年に生まれて1967年に亡くなっているので、演奏当時82歳。その年齢で、これほど鮮やかで活力のある演奏をできることに、とりあえず感嘆する。

ディテールを雄弁に響かせるための広々とした造形。
ただし、壮大志向ということではない。響きの量感は控えめで、個々のパートをクリアに響かせて、室内楽的と呼べるくらいの密度で、アンサンブルを制御している。

演奏のベースにあるのは、各パートの掛け合いによって音楽を編み上げる、言わば古典的なアンサンブルの作法。

幻想性とか神秘性みたいな気分・雰囲気も、音響の奔流みたいな効果も乏しい。
と言っても、枯れた印象は皆無。肩の力は抜けているけれど、活力とか張りは必要十分。

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素朴なくらいに正攻法なアプローチだけど、アンサンブルを操る並外れた力量が、この演奏を非凡にしている。

大筋では正攻法なアプローチだけど、ディテールの表現では、まるで作品と戯れるように、自在に遊んでいる。
フレーズを揺らしたら伸縮させたり、ワンポイントで特定のパートを際立たせたりみたいなことを、随所でやっている。
この曲をある程度聴いている人にしか伝わらないような小技中心に、楽曲のイメージを損なわない範囲で、思う存分やっている。

オーケストラは、ちょいちょい手探りで合わせている感じはあるけれど、老巨匠の意図をくみ取っている。

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かなり自由な演奏だけど奇抜ではないから、楽曲を知る目的で聴いても支障無さそう。

でも、ある程度この曲を知っている人の方が、よりシューリヒトの芸を味わえて、楽しめるかもしれない。

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