シューリヒトによるブルックナー交響曲第5番(1963)

カール・シューリヒト指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。
1963年のライブ録音。良質なモノラル録音。

シューリヒトのこの曲の音源は他に、1962年のシュトゥットガルト放送交響楽団とのライブ録音、1959年のヘッセン放送交響楽団とのライブ録音がある。前者はここでも取り上げている。後者は未聴。

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個々のパートをくっきりと鳴らしわけながら、そのコンビネーションの妙味で聴かせる。
妙味と言っても、控えめな隠し味的なものではなく、大胆不敵。

音の重ね方やバランスの作り方に創意工夫が凝らされ、テンポは自在に伸縮する。
大胆にやっているけれど、気ままな印象はしない。楽曲を知り尽くした人が、味わい尽くし、楽しむような手つき。そういう楽しさを、聴き手と共有するような。

同じテンポを動かすにしても、フルトヴェングラーのような、楽曲の構成に則って緩急や起伏を強調するというやり方ではない。
シューリヒトのは、個々のフレーズに込められているニュアンスを強調する感じ。

そういうやり方なので、ガッチリとした造形感みたいなものは感じられないけれど、かと言って散漫に流れることはない。
大胆に揺さぶりながら、全曲通しての一貫性を聴かせるところに、この指揮者の技を感じる。

ブルックナーだからと言ってことさらに厚く響かせることはない。
しかし、フレーズの線は、しなやかでありながら、ほどほどに粘りとか芯の強さがあって、密度濃く連動させるから、腰の軽さはない。
いかにも大曲というタッチではないけれど、手ごたえは十分にある。

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シューリヒトの大胆なアプローチに実体をもたらすウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のアンサンブルは非凡。

指揮者がこれだけ振り回しても、食らいつくというより、むしろノリ良く乗っかっている感じ。
暴れん坊な指揮ぶりを考えると、アンサンブルはよくまとまっている。

他の指揮者と一味違う角度からこの交響曲を聴かせると同時に、この指揮者の飄々とした凄みを見せつける音源。

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