ズヴェーデンによるブルックナー交響曲第8番

2011年のセッション録音。
この指揮者は、2006~2013年にかけて、ブルックナーの交響曲全集を録音している。
ズヴェーデンは、1960年生まれのオランダ出身の指揮者。
2005~2012年の間、オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務めた。
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柔らかくて広がりのあるサウンドが展開される。ソフトフォーカス気味だけど、曖昧模糊とした響きではなく、個々のパートのやっていることを聴き取ることはできる。
量感はあるけれど、低音が分厚いわけではなく、重苦しさはない。
逆に、うねるような粘り強さも感じられない。
テンポは、終楽章はやや速めで、その他の3楽章は標準~やや遅め。第三楽章を全曲の頂点として全曲のまとまりを作っている模様。
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弦主体に表情が作られており、柔らかくてしなやかなフレージングで、心地よく歌い込まれる。
フレージングの陰影は豊かだけど、息継ぎは淡々としている。自在な息遣いで聴き手を引き込む、みたいな芸当はやらない。
そのせいか、ロマンティックな味付けのようでありながら、そこにのめり込むことはなく、楽曲と一定の距離感を保つ印象。良く言えば、節度とか清潔感が感じられる。
木管群は総じて線が細く、ときに埋没してしまう。第四楽章の展開部あたりは、快速テンポがあいまって、ピーヒャラとお囃子のような調子。
金管群はもちろん埋没することはないけれど、弦の豊かな響きにくるまれている。
オーケストラは、ズヴェーデンが狙っている音響を体感させてくれる程度には健闘しているけれど、全体的に響きが薄くてうま味に乏しい。
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弦にウェイトを置いて、表情を明確に出しながら、豊かな響きをもたらす作法に、徹底した自己演出を感じる。演奏のコンセプトが端的で、わかりやすい。
しかし、その見返りに内声部が薄められており、音楽の密度は薄まって聴こえる。楽曲を堪能する目的で聴くには、物足りない。
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