ロストロポーヴィチによるバッハの無伴奏チェロ組曲

好感度 ■■■■■
1991年のセッション録音。
1927年生まれのロストロポーヴィチが、60代中盤の頃の録音。
この高名なチェロ奏者としては唯一のセッション録音。満を持しての録音なのだろう。
彼の同曲の音源としては、1955年のライブ録音があるようだ。
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ロストロポーヴィチへの個人的な先入観から、起伏の大きなダイナミックな演奏を予想したけれど、そういう演奏ではなかった。
自分らしさを抑えているわけではないけれど、ことさらにそこを押し出すことはなく、楽曲の持ち味と自分の音楽性を協調させるようなアプローチ。
派手さは乏しく、むしろ親密さを感じさせる表現。
良くも悪くもで面白みはほどほど。
というか、演奏者自身、面白がることより、じっくりと味わうことを聴き手に求めている。
これがこの人の結論なのか、年齢なりの落ち着きということなのか、判断できないけれど。
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それでも、相対的には、構造とか様式観みたいなものより、情緒性とか気分に重きが置かれている。
テンポの動かし方、音量の設定、歌い回しとかに目を向けると、演奏者の恣意(あるいは思い入れ)が色濃い。求める効果を実現するために型を崩す。
そういう意味では、ロストロポーヴィチの芸を聴く演奏になっている。
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