イタリア四重奏団によるベートーヴェン弦楽四重奏曲第15番

好感度 ■■■■■
1967年のセッション録音。全集から。
イタリア四重奏団は、1945年に結成され1980年に解散した。ヴィオラ以外は、メンバーが固定していた。
ベートーヴェンの全集は、1967年から1975年にかけて録音された。
グループ名の通りイタリアに拠点を置くものの、レコーディングされたレパートリーのほとんどは、独墺系の楽曲。
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楽曲に実直に向き合って、楽曲そのものに語らせようというアプローチ。作品の捉え方は素直で、調和を旨とした質の高いアンサンブルが繰り広げられる。
このグループの特質は、これみよがしではなく、時間をかけて熟成されたもとして、伝わってくる。あからさまではないけれど、深く行き渡っている。
各パートの響きは明るくて柔らかくて艷やか。
造形を一切歪めないけれど、その範囲内でそれぞれがしなやかに歌わせる。端正でありつつ、コクと粘りがある。
四者のバランスは均等に近い。個々のパートは、埋没することはないけれど、出過ぎることもなく、協調して、この団体特有の調和した豊かな響きを生み出している。
また、強弱の幅はあるけれど、刺激的なまでの激しさや、消え入るような弱音はマレ。
音楽は、常に、明朗でふくよかに響いて、心地よい。反面、陰影めいた要素は乏しい。
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この団体の個性を意識させられるのが、全曲の中核をなす第三楽章。19分30秒以上かけて、じっくりと演奏されている。
作曲者による「病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」という副題とは裏腹に、ひたすら明朗で豊かに仕上がっている。
個々の奏者は、気持ちを込めて入念に楽器を歌わせてくるけれど、合奏全体としては、感情表現より、調和したアンサンブルの美観が印象に残る。
このあたりで好悪が分かれそう。
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