ティーレマンによるブラームス交響曲第1番(2012年)

好感度 ■■■■■
クリスティアン・ティーレマン指揮ドレスデン・シュターツカペレの演奏。
2012〜2013年に録音された全集から。
ティーレマンは、2012年からこのオーケストラの首席指揮者を務めている。
なお、ティーレマンは、2006年にミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団と、録音している。
また、ドレスデン・シュターツカペレとDVDの交響曲全集も作っているが、そこでの交響曲第1番の演奏は、2012年東京でのライヴ収録のようだ。
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個々のパートの鮮度を侵さない範囲で量感豊か。重厚というのではないけれど、音楽の柄はそこそこ大きい。
その一方、一音一音を艷やかにしなやかに磨き上げている。もちろん、刺々しさや荒々しさは入念に取り除かれていて、とりわけヴァイオリン群のニュアンスあふれる歌い回しに耳を奪われる。各パートの発色も見事。とても洗練されている。
クライマックスでも、テイストは変わらないから、圧倒されるような力強さはない。でも、テンポの変化や呼吸感などを駆使して、それなりに盛り上げる。
第一楽章の展開部のクライマックスは難所だと思うけれど、力押ししないで、オーケストラのスリリングな合奏力で盛り上げる。指揮者もオーケストラも、抜群にうまい。
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終楽章はけっこうアクの強い演奏が繰り広げられている。
一定の推進力を維持しつつも、変幻自在の表現。テンポや音量や歌わせ方はわりとよく変化するし、強調するように変化させる。楽曲の展開に合わせた自然な揺らぎというのではない。
ゆったり広々とした序奏部に続いて、抑えめに始められる第一主題とか、再現部もしくは展開部が頂点に達する前段階での音量ダウンとか、コーダに入るときのたっぷりとしたタメとか。
まちがいなく作為的だけど、そうした試みのいくつかは面白い。ここでのティーレマンのアプローチに共感できるわけではないけれど、楽章の入り組んだ書法を、明快かつしなやかに解せている点は、好ましい。
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