グリュミオーによるブルッフのヴァイオリン協奏曲(1962年)

好感度 ■■■■■
アルテュール・グリュミオーのヴァイオリン独奏、ベルナルド・ハイティンク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団。
1962年のセッション録音。
グリュミオーは1921年生1986年没のベルギーのヴァイオリニスト。
この録音の頃は40歳過ぎ。
この曲の正規録音は3つあるようだ。
これ以外は1956年録音(レスコヴィチ指揮ウィーン交響楽団)と1973年録音(ワルベルク指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団)。
一方のハイティンクは、1961年に同オーケストラの首席指揮者に就任したばかり(1964年まではヨッフムが補佐した)。
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第一楽章は、あちこちで見栄を切らなければならないけれど、グリュミオーは線の細い美音を保ったまま、もっぱら引き締まった息遣いで、緊張感を演出する。
気合は感じられるけれど、なよっとした質感が残っていて、迫ってくるほどではない。
それが印象を中途半端にしているかも。
この人なら、こういうやり方になるかと納得だけど、今ひとつ様になっていない。
これがフラームスの協奏曲なら、叙情サイドに振っても音楽として成立するだけの奥向きが、楽曲に備わっている。
しかし、ブルッフの協奏曲はもっと軽薄な曲なので、ストレートに力を込めてくれたほうが、わかりやすい。
伴奏のハイティンクは、ソロがメインの場面では伴奏に徹するけれど、オケが前に出る場面では、量感があって力強い。
立派だし曲の劇的なイメージには合っているけれど、ソリストの方向性とはズレがある。
グリュミオーに合わせるなら、70年代初頭のシェリングとの協演盤のように、柔らかくジェントルにやってほしかった。
第二楽章は、グリュミオーの良さが感じられる。
肩肘張ってダイナミックに演奏されるとスカスカに陥りやすい楽曲を、等身大で伸びやかに歌わせている。
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グリュミオーは、持ち味がはっきりしている奏者だけど、持ち味にピッタリとは思えない楽曲でも、それなりに聴かせる懐の広さを持っていると思う。
ただ、このブルッフは、そうでもなかった。
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