アクセル・コーバーによるワーグナー楽劇『神々の黄昏』

アクセル・コーバー指揮、デュイスブルク・フィルハーモニー管弦楽団他。

2019年に一気に録音された『ニーペルングの指輪』全曲から。公演を編集した録音。

コーバーは、1970年ドイツ出身の指揮者。今のところ、劇場指揮者としての活動が主のようだ。

2009年からはラインドイツオペラの音楽監督を務めている。デュイスブルク・フィルハーモニー管弦楽団は、ラインドイツオペラの下部組織らしい。

ちなみに、コーバーは2013年にバイロイト音楽祭デビューしている。これまでのところ、主としての“歌劇”を担当しているようだ。


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ブリュンヒルデを歌うのはリンダ・ワトソン。録音当時60歳かその直前。自己犠牲では、声の安定感は微妙ながら、滑ったり転ぶことはなく、最後まで地に足の着いた歌唱。

一方ジークフリートを歌うコービィ・ウェルチは(まったく知らない人)、たぶんこの役を歌うには声が軽くて弱いのだろうが、無難な仕上がりと感じた。


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管弦楽パートは、ワーグナーの素晴らしいオーケストレーションを、ひたすらプレーンにフラット聴かせる地味なアプローチだけど、精度が高くて流暢なアンサンブルは心地よい。

柔らかく広がる低音が自然なスケール感をもたらしているけれど、アンサンブル自体は端整で機能的。葬送行進曲あたりも、煽りなしで整然とまとめている。

決めるべき場面でのパンチ力はもうひとつだし、陰影みたいな要素は乏しいから、ドラマ性を期待して聴くと肩透かしになるかもしれない。


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コーバーの指揮ぶりは、ドラマを雄弁に描きあげるより、もっと抽象的に、声と管弦楽の有機的なアンサンブルを編み上げることに専念している感じ。

舞台上の出来事を無視しているわけではない。そういう違和感はないけれど、指揮者のドラマへの関与はかなり控えめ。

この指揮者の表現力の限界なのかもしれないが、やっていることに関しては高水準なので、こういう作品との距離感も悪くないと感じられる。

少なくとも、創造主のように作品世界を自分の色に染め上げる剛腕タイプよりは好ましい。

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