ハンス・スワロフスキーによるワーグナー楽劇『ワルキューレ』
ハンス・スワロフスキー指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団およびプラハ国立歌劇場管弦楽団の団員からなる録音用オーケストラ。
1968年の『ニーベルングの指環』セッション録音から。少し古い録音ながら、音質は良好。
スワロフスキーは1899年ハンガリー出身の指揮者。1975年没。指揮法の指導者としても名高い。
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音質は鮮明ながら、オーケストラサウンドはかなり奥まっていて、不自然なバランス。それでも、スワロフスキーがやっていることは明瞭に伝わってくる。
臨時で編成された混成オーケストラのようだが、指揮者の徹底されていて、響きとして明確に聴き取ることができる。統率力の高さを感じさせられる。
低音パートをスッキリと響かせることで、各パートの表情が鮮度高く表出されている。そのかわり、ドイツ風の厚みや広がりは薄弱。幕ごとのクライマックスでも、サウンドの圧力は軽め。
そのうえで、瞬間瞬間のパート間のバランスに徹底的にこだわっている。前に出す音、引っ込める音をメリハリよく切り替えて、しばしば独自のニュアンスを作り出しており、ハッとさせられる。
ただし、そのわりに雄弁とは感じられない。
主な原因は、平板な呼吸感だろう。音楽の振幅が激しい場面でも、呼吸感の変化は乏しい。
たとえば、「告別」の入りでも、集中から解放に切り替わる感覚が乏しい。物理的に音量がアップしているだけのようにも聴こえる。本来なら、ハッと息をのむような瞬間にしてほしい場面だ。
ワグナーの楽劇には、こういう決定的な瞬間が散りばめられている。そこでの演奏効果が今ひとつ。それ以外の場面はいい感じなのだけど。
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わたし自身は歌手の歌いっぷりについて感度が低いというか、要求レベルは低いつもりだが、このジークリンデは音程が揺れる感じで聞き苦しい。
また、ブリュンヒルデは、声の威力はあるけれど、少々粗いかもしれない。微妙にところだけど。
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