メータによるワーグナー楽劇『ワルキューレ』(2002年録音)
ズービン・メータ指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団他。
2002年の公演からの編集物。
メータは、1998〜2006年にかけて、この劇場の音楽監督だった。その時期の録音。当時メータは円熟の66歳。
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メータの演奏様式は完成されており、 オーケストラのことも掌握できている感じだが、音楽そのものが訴求してこない。
読みが浅いとか、表面的とかではなく、いろいろ削ぎ落とした純度の高い音楽なのだけど、割り切りよく削ぎ落とし過ぎでは?という感じ。
なめらかで透明度の高いサウンド、スムーズで機能的なアンサンブル、ほんの少し生々しい響きを帯びた金管パートあたりが主成分。
この透明感と滑らかさを両立させたアンサンブルは、容易に到達できないような、洗練された領域なのだろうが、かと言って官能的と呼べるような域には達していない(“まじめさ”ゆえかもしれない)。
感情表現もあるにはあるけれど、おおむね歌手たちに任せていて、それに寄り添うくらいの濃さにとどまっている。
もしかしたら、知的な抑制を働かせているのかもしれないが、一歩どころか、三歩も四歩も距離を置いている感じがもどかしい。
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そこそこ動的ではあるけれど、血の気の薄い管弦楽のせいで、ドラマとして静的に感じられる。
そしてその影響か、歌手たちの歌唱は個々には雄弁だけど、リアルに響いてこない。
もっとも、脚本の読み替え上演が一般化している時代だけに、こういうのが舞台の演出にはピッタリだったのかもしれない(ちなみに、公演の映像も発売されている)。
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