ゲルギエフによるブルックナー交響曲第5番(2019年録音)

ワレリー・ゲルギエフ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏。

2019年、ブルックナーゆかりの聖フローリアン修道院でのライブ演奏(編集物)。


ゲルギエフは、2015年9月より同オケの首席指揮者を務めており、すでにブルックナーの交響曲全集を完成させている。

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以前、ゲルギエフの指揮によるワーグナーを聴いたことがあり、音符をのっぺりとつなげて歌わせる手法に違和感を覚えた。あんな感じだと嫌だな、と思いながら聴き始めたが、不安は的中しなかった。

豊かな響きのせいで、当たりはずいぶん柔らかいが、端正でメリハリもある。造形は柔構造で、ガッチリとしたものではないが、安定感はある。
本場風のテイストとは異なるものの、異国情緒がことさらに強いわけでもない。

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演奏者も録音スタッフも、会場の豊かすぎる響きを活かすことに意識を向けているようだ。

ゲルギエフは、もともとサウンドを形成する能力の高い指揮者だが、自分らしさを活かしつつもそれを前面に出さないで、オーケストラとの共同作業を成功に導くことに力を注いでいる感じ。

本来オーケストラ音楽に不適なレベルに豊かな響きの代償として音が濁るのはしかたがないけれど、そんな中でオーケストラを繊細にコントロールして、肌理のある音楽に仕上げている。

指揮者の“色”より“腕”を感得させてくれる音源だと思う。

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ミュンヘン・フィル視点に立つと、たとえ響きの面でやっかいでも、作曲者ゆかりの会場での演奏記録には、意義があるのだろう。

しかし、エピソード性にこだわるなら、ローカルな味わいに100%浸れるよう、筋金入りのドイツ系指揮者に棒を託してほしかった(誰が適任かはわからないが)。

ゲルギエフは首席指揮者として見事に腕前を聴かせているし、もしかしたらこの仕事を楽しんだかもしれないが、この人の実力を堪能するなら、音楽的な意味でまともな会場が望ましいと感じた。

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