小林研一郎によるベートーヴェン交響曲第5番

小林研一郎指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団。2010年のライブ録音。
交響曲全集の1つ。
この指揮者を聴くのは初めて。
厚くて激しい演奏をする指揮者というイメージを持っていたけれど、この音源に関しては、熱さや激しさを強調するような演奏ではない。
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描き出される作品像は、現代オーケストラの厚い響きを活かしつつ、キビキビとして、勢いがある。
ただ、勢いに任せることはなくて、造形は手堅く整っている。場面ごとの、前に出す音、後ろに引く音の切りかえも、スムーズで自然に聴こえる。
煽るようなところは無いけれど、ボルテージは一定以上のレベルで一貫していて、小気味が良い。
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ただ、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団という、かなりのポテンシャルを持つであろうオーケストラの合奏力を、どこまで引き出せているのだろう。
そもそも、わたしは、最近のチェコ・フィルを知らない。アンチェルとかノイマンの頃のイメージしかなく、あの頃はポテンシャルの高いオーケストラだったと思う。
現在も、当時と同等か、近い水準を保っているとしたら、この音源の合奏は物足りない。
悪くはないけれど、響きの肌理を楽しめるほどの純度・精度は無い。聴き進めるにつれて、表情の凹凸の乏しさが気になってくる。これは指揮者の腕によるものだろう。
小気味良い演奏なので、気持ちよく聴けるけれど、ハッとさせられるような場面とか、後になって反芻されるような場面は無い。
観客席で聴いたら楽しめそうだけど、音源として繰り返し聴くには弱い。
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