ポール・パレーによるサン=サーンス交響曲第3番『オルガン付』


ポール・パレー指揮デトロイト交響楽団の演奏。1957年のセッション録音。

古いステレオ録音ながら、音質は鮮明。


パレー(1886~1979)はフランス人。自らが育て上げたデトロイト交響楽団との音源が多数。

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確固とした自分のスタイルを持った指揮者。明晰さへの飽くなきこだわり。そして、手兵を鍛え上げて、己の美意識を実体化してしまう手腕。

スッキリと切り詰められた造形と、透明度が高くて開放的なサウンド。軽快で歯切れ良いアンサンブルが、スムーズに運動しながら、楽曲の構成とか書法を、すみずみまで浮き彫りにしている。

面白いのことに、明晰さにとことんこだわりながら、合奏の精度にはところどころ緩みがある。根っこのところはとことんこだわるくせに、仕上げはおおらか。

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こういった特徴は、パレーの他の音源でも感じられたことだし、この音源でも顕著。

空間に音響が飽和する、みたいな状況は皆無。空間的な広がりを感じさせながら、響きは曇りなく晴れ渡っているかのよう。
裏を返すと、音響がうねったり、漂ったりみたいなのも期待できない。響きの陰影とか、色彩感とかも乏しい。

安定したテンポをベースに、多彩な表現を歯切れよく繰り出し続ける。締めくくりも、豪快さより、切れの良さで盛り上げる。

デトロイト交響楽団は、抜けの良い乾いた音色で、機能性が際立っている。

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パレーの明晰さは、音響美とか愉悦を実現する手法としての明晰さではなく、明晰であること自体が目的のように聴こえる。

むき出しの明晰さであり、それを心地よく感じない人もいるだろう。 個人的には、頑固一徹の辛口度合いが楽しい。

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