ミュンシュによるサン=サーンス交響曲第3番『オルガン付』

シャルル・ミンシュ指揮、ボストン交響楽団。
1959年のセッション録音。

古いステレオ録音で、音質の抜けとか透明度はイマイチだけど、オーケストラの表現は細かなところまで聴き取れるし、ダイナミックな音響が生々しく捉えられている。

ミュンシュは、クリュイタンスの前に、パリ音楽院管弦楽団の首席指揮者を務めていたくらいなので、少しくらいは本場のテイストを期待してしまうかもだが、そういうのは乏しい。
基本的には、豪快でパワフルで明朗な、アメリカンなテイスト。

ただ、各パートのフレージングは、けっこうしなやかなで、それをフランス風と言うつもりはないけれど、曲想には似つかわしく聴こえる。

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親しみやすい曲想に派手な音響効果が目につくだけに、オーケストラを派手に掻き鳴らすタイプの演奏が少なくない。

この音源は、レコーディングとしては、そうしたアプローチの原点の一つだし、現状においても存在感は大きい。
ミュンシュの、オーケストラをドライブする能力が、専ら良い方向に作用している。

描かれる作品像自体は、至って素直。
ことさらの演出めいたものは見当たらない。テンポの設定はやや速めだけど、煽り立てるほどではないし、足取りは安定している。

サウンドは厚くたくましいけれど、造形もアンサンブルも終始一貫して明快に保たれている。

楽曲には自然体で向き合い、明快さを確保しつつ、オーケストラを一体としてうねらせて、躍動させている。

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録音の影響があるのかもだが、陰影のようなものは乏しい。あくまでも明朗でたくましい。
繊細さとか、淡い色合いの変化みたいなものを求めると、あてが外れそう。

ただし、表現の幅はそれなりに広い。曲調の変化に自然に反応していて、穏やかさ、崇高さだって、十分に表出している。
第二楽章の、前半から後半に移行する場面での、上昇する音型がもたらす静けさとか、堂に入ったものだ。

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