ミュンシュによるベルリオーズ幻想交響曲(1967年セッション録音)


好感度 ■■■■■

シャルル・ミュンシュ指揮パリ管弦楽団。
1967年のセッション録音。

パリ管弦楽団は、パリ音楽院管弦楽団を母体として、1967年設立。
その初代首席指揮者がシャルル・ミュンシュだったが、彼は1968年に急逝。

亡くなったとき77歳だったので、年齢を見たら意外な死ではない。
ただ、演奏を聴く限り、力が漲っている。この1年ほど後に亡くなるとは予想しづらいか・・・

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鋭敏でドラマティックな演奏。楽想の変化に敏感に、大きな身振りで反応し、この曲の異様さを生々しく表現している。

丹念に磨き上げるのではなく、むしろオーケストラを振り回すことで、望む効果を生み出していところは、いかにもあの時代の大指揮者という風情。

荒々しくても、サウンドの見通しの良さは揺るがないし、場面場面での個々のパートの浮き上がらせ方は、芸が細かい。
その気になれば、アンサンブルを高いレベで磨き上げられそうだけど、この指揮者はそちらに向かわない。
オーケストラを駆り立て、煽るところから、非日常の狂気を演出する。

現代の感覚で聴くと、かなり荒削り。
しかし、美しいところは美しく、グロテスクなところはグロテスクにと、よりストレートな表現ととれなくもない。
洗練とか耳あたりの良さが偏重されるスタイルも、どこか退屈なので。

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エネルギーは大きいけれど、オーケストラの編成はそんなに大きくはなさそう。
内声部の表情が雄弁で鮮度が高い。

圧力は強いけれど、響きの量感によるそれではなく、あくまでも表現の激しさ、ダイナミックさで迫ってくる。

単純な脳筋ではなく、作品書法に対する識見も意識させられる。

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ミュンシュの感情表現は達者だけど、その根底には思い切りの良さがあって、そのために、演奏自体が力強くて健康的な色調を帯びてしまう。

作曲者が書き記した深い絶望感とか麻薬がもたらす幻想みたいな気配は乏しいかもしれない。むしろ、ためらいなく狂気に身を任せるような風情がある。

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よりリアルな狂気に浸りたいなら、同じ組み合わせによるデビュー・コンサートのライブ録音だろう。

その後にこの音源を聴くと、むしろ、場面場面の表情を着実に表出していることに気づかされる。

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