ショルティによるワーグナー楽劇『ワルキューレ』

ゲオルグ・ショルティ指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。
1958〜1965年に録音された楽劇『ニーベルングの指環』全曲から。


『ワルキューレ』の録音は1962年のようだ。古い情報には1965年とするものもあった。

指揮者のショルティは、この録音中に50歳になったようだ。


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リマスターによって、印象がグッと良くなった。
以前の録音だと、金管パートの生々しさがときに刺々しく聴こえたが、この音源にはそれがない。
響きの鮮度は上がっているのに、まろやかな一体感が感じられる。

どちらが実際に近いかはともかく、管弦楽への印象が変化した。
ダイナミックで表情の彫は深めだけど、名門オーケストラの美質を活かしながら、知的に楽曲の書法を描き出した演奏、くらいの印象。

これだったら、曲を楽しみたいときに、気軽に耳を傾けられそう。


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歌唱を聴くには、模範的な音源の一つだと思う。

主役級の歌手それぞれがハマっていると言うか、声や歌い方と役柄とのマッチングが自然に感じられるという意味で、最右翼の音源だと思う。

というか、低次元なことだけど、役柄とのキャラの乖離や、過剰なヴィブラートや、余裕のない発声などで、足を引っ張る人が一人もいないのはありがたい。

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ショルティが率いる管弦楽は、普通にストーリーが流れていく部分、つまり大半はとても良い。

録音の録り方もあるのだろうけれど、木管とかの内声部も雄弁で、全体的には明晰さが勝ったアプローチだけど、ほどよく湿度とか濃さが加味されている感じ。

一般的な意味での相性の良さとは違うけれど、ショルティとこのオーケストラとの組み合わせは、いい塩梅。

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ただ、盛り上がる場面でのショルティの作法は、ちょっと安っぽい。

彼は、塊状の響きが嫌で、個々のパートを明解に響かせたい。しかし、劇的なシーンでは、迫力とか激しさも表現したい。

この2つを両立させるために、ここぞという場面で、金管を鋭いアクセントで野太く鳴らす。

確かに、このやり方なら、響きを混濁させないで迫力を演出できる。しかし、単純に聴いていて下品だし、演奏様式としても洗練を感じない。

その瞬間、サウンドは混濁しないものの、金管が前に出過ぎることで、響きの多様性は損なわれている。
解決策としてはちょっと安直すぎないか?というか、これで解決になっているのか?

いずれにしても、金管はバリバリがなりたてているけれど、他のパートは大して白熱していない、みたいな構図には、ちょっと白けてしまう。

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