バーンスタインによるベルリオーズ幻想交響曲(1976年)

好感度 ■■■■■
レナード・バーンスタイン指揮フランス国立管弦楽団。1976年のセッション録音。
バーンスタインがCBSレコードとの独占的な関係を解消し、EMIやDGへの録音を活発化させた頃の録音。
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個々のパートを生々しく蠢かせながら、しかしオーケストレーションの全貌を常時整然と提示している。
「この場面では木管を前面に出して、弦は背後から支えるように・・・」というような形で響きを整理しない。
すべてのパートを均等に聴かせることが前提にあって、その上でバランスがコントロールされている。
このあたりは、作曲をする指揮者ならではのこだわりのようにも聴こえる。
機械的な意味での楽譜への忠実ではなく、音符の一つ一つにもれなく(彼なりの)意味を与えようとしている感じ。
そしてこの指揮者は、自分の望む音楽をやりきれる耳の良さとか、統率力を備えている。
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ただし、こういう鳴らし方には副作用もある。
まず、場面場面の表情のメリハリは出にくくなる。表情付けが的確におこなわれているのは伝わってくるけれど、場面ごとのコントラストは弱い。
良くも悪くも、語り口みたいな要素は乏しい。
それ以上に気になるのが、それぞれのパートの響きが被さりあって、音の鮮度を少しずつ損なっている点。全体の響きを、ほんのりと濁らせくすませる。
個々のパートの表情や動きは明瞭かつ生々しいけれど、総じて鈍色で伸びない。
この音源は、フランスのオーケストラだからか、息苦しさは軽減されているけれど、響きに艶とか華やかさは無い。
そして、EMIの締まらない録音が、その傾向を助長している。
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良く言えば、作品のおどろおどろしい面を引き出している。でも、おどろおどろしくない方が効果的であろう場面も、おどろおどろしく聴こえる。
第四、第五楽章は、これらだけを抜き出して聴けば、らしく聴こえるかもしれない。物々しくて迫力もある。
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