プレートルによるベルリオーズ幻想交響曲(1985年)


好感度 ■■

ジョルジュ・プレートル指揮ウィーン交響楽団。
1985年のセッション録音。

プレートル(1924~2017)はフランスの指揮者。
1986年から1991年までウィーン交響楽団の第一客員指揮者を務め、その後終身名誉指揮者となっている。

また彼は、同曲を1969年にボストン交響楽団とセッション録音している。

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かなり自由にテンポを動かしながら、濃くて厚みのある音楽を繰り広げている。
とは言っても、基本のペースを逸脱しないので、造形感はまずまず安定している。

ドラマティックに進行させながら、しかし流れに身を任さずに、局面毎に、独特のインスピレーションを交えつつ、楽譜の音のひとつひとつを生々しく浮かび上がらせていく。
スマートで美しい幻想ではない。

個々のパートの表情は明解で、指揮者の耳の良さとか統率力は伝わってくる。でも、響きに雑味が混じっていて、洗練を感じさせるところまでは届いていない。

ヴァイオリンとか木管とかは、しなやかでそんなに粘らない。だから、一昔前のドイツ系の巨匠指揮者が聴かせたような、ゴツゴツとした感触ではない。
でも、響きの全体としては、少々重苦しい。

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第四楽章までは、プレートルのやりたいことが、ほぼ実践されているように聴いた。好むか好まないかは別として、狙い通りに仕上がっている感じ。

第五楽章も、全体としては悪くないけれど、不満が残った。
とりあえず、ヴァイオリンが急速に動く局面のたびにテンポを煽るのだけど、上滑りしている感じで具合が良くない。
楽章全体としては堂々として運びだけに、違和感がある。好みの範疇かもしれないが。

そして、楽章後半はやや腰砕け。
金管がドスを効かせて迫力を出しているけれど、それに比べて弦が弱い。各パートが激しく交錯する聴かせどころで、弦の腰が軽くて弱くて、めくるめく感じにならない。

全曲の中ではごく一部分に過ぎないけれど、オーケストラの実力が問われる勝負どころで弱さが出たのは残念。

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