マーツァルによるマーラー交響曲第9番


好感度 ■■■■■

ズデニェク・マーツァル指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団。
2007年のセッション録音。

マーツァルは、1936年チェコ出身。2003〜2007年にかけて、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務めた。

この音源の録音時期は、退任直後にあたる。

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緩急とか強弱の振れ幅は最小限度に抑えられ、端整にきめ細かく作り込んでいく。

音の出し方は、どの場面でも、薄っすらと湿り気を帯びたような透明な響き。丁寧で細やかなアンサンブル。
低音パートは、柔らかく広がるように、全体を支える。
安定した足取りで、造形はそりなりに大きい。

緊張と弛緩、高揚と沈潜、集中と解放というような、コントラストは至って控え目。
たとえば暴力的に表現するように楽譜に指示されている場面でも、アンサンブルの美観を優先し、控えめな暴れ方。

また、ディテールの描写に重きが置かれていて、フレーズを連ねて大きな流れを作り出す、みたいな気配は乏しい。

目指すアンサンブルの佇まいを実現するために、いろいろ切り捨てているようにも聴こえる。意地悪な見方をすれば安全運転。
地道で丁寧なアプローチのようだけど、楽譜に書き込まれた作曲者の細かな指示より、自分の美意識を優先しており、こだわりは強そう。

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いずれにしても、マーツァルは自分の欲するところを自覚し、それを高いレベルで具現化している。高品質の演奏。

名門オーケストラの、精緻でありながら、しっとりとしたアンサンブルも素晴らしい。
特に、第四楽章の独特の心地よさは印象的。

ただ、ドラマティックな要素はかなり薄まっているし、表現のコントラストが弱いから、長丁場を楽しめとは限らない。

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