デュトワによるベルリオーズ幻想交響曲

好感度 ■■■■■
シャルル・デュトワ指揮、モントリオール交響楽団。
1984年のセッション録音。
デュトワは、1936年スイス出身の指揮者。
1977年にモントリオール交響楽団の音楽監督に就任し、1980年録音のラヴェルの『ダフニスとクロエ』全曲を皮切りに、数々の録音を世に送り出した。
ちなみに、デュトワには、2017年にセクハラ疑惑が持ち上がり(本人は否定)、活動を自粛している模様。
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指揮者の美意識がすみずみにまで行き渡っていて、よく磨き上げられている。
軽快でしなやか。そして、柔らかくて艶のあるサウンド。
力強い場面になると、軽やかさを保ったまま、キレの良さや瞬発力を聴かせる。
場面ごとの表情がクリアで、洗練された耳あたり。そういう方向で徹底的に磨かれている。
不気味さとか生々しさは乏しいので、後半の2つの楽章は薄味。弱々しくはないけれど。
オーケストラの自発性みたいなものは聴かれないかわりに、デュトワの楽器として、その美意識を体現している。必要十分に巧い。
というより、ここまで仕上げたデュトワの手腕を称えるべきか。
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サウンドは明解なので、木管の動きもよく聞き取れるけれど、イニシャティブはヴァイオリン群を初めとした外声部にある。
ヴァイオリンや金管のような、音の大きなパートで表情の枠組みを作って、その他のパートはそれの肉付けとか彩りとして機能している。
音楽の表情はビシッと決まりやすいけれど、聴き進めるうちに、単純化された表現が物足りなくなってくる。もう少し、アンサンブルに密度感が欲しい。
ある程度長い曲に、こういうアプローチをすると、こうなるのは避けられない。
分かりやすいけれどコクは乏しいという、よくも悪くも初心者向けの音源だと思う。
わたしの耳はさほど優れていないけれど、初心者ではないので、ちょっと物足りない。
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