ヴェンゲーロフによるシベリウスのヴァイオリン協奏曲

独奏はマキシム・ヴェンゲーロフ、伴奏はダニエル・バレンボイム指揮シカゴ交響楽団。
ヴァイオリン独奏もオーケストラも、それぞれ押し出しの良い音楽をやっているけれど、良くも悪くも体育会系。
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ヴェンゲーロフはかなり攻めている表現。ときにささやくように、ときにはワイルドに。歌いまわしには、だいたんな揺れや伸縮がある。
それでいて、技術的にも音色の面でも、まったく揺るがない。終始、力強い張りがある。
深い息遣いを聴かせるわけではないので、音楽に没入している印象を受けない。物おじなく、大胆に自在に、自分の感性を解放している感じ。聴き方によってはスポーツ選手の美技を楽しむ感覚。
熱演だけど、息苦しさはなくて、スムーズに進行する。
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一方、バレンボイムの方は、骨太で堂々とした演奏ぶり。オーケストラの機動力をむき出しにした、骨太で硬質なタッチ。
本場の指揮者たちがこだわるシベリウスらしさみたいなものを一顧だにしないで、かと言ってバレンボイム独自のシベリウス像を形作るでもなく、力でねじ伏せるような感じ。
別に本場風の演奏でなくとも良いけれど、これだけ自己主張が強いのに、曲想への思い入れが感じられないので、居心地はよくない。
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