クナッパーツブッシュによるワーグナー楽劇『ワルキューレ』(1957)
ハンス・クナッパーツブッシュの指揮。
歌手は、ホッター、ヴァルナイ、アルデンホッフ、ニルソンなど当時のオールスターたち。
1957年バイロイト音楽祭でのライヴ録音。
歌手は、ホッター、ヴァルナイ、アルデンホッフ、ニルソンなど当時のオールスターたち。
1957年バイロイト音楽祭でのライヴ録音。

クナッパーツブッシュはバイロイト音楽祭で、1951年、56年、57年、58年に指環を指揮している。ただし、『ワルキューレ』の録音が残っているのは1956〜1958年。
::::::::::
1956〜1958年の3種の『ワルキューレ』の中で、人様に勧めるとしたらこれ。
圧倒的な感銘を与えてくれる演奏ではないけれど、揺るぎない安定感になんとも言えない居心地の良さを感じる。
悠々とした指揮ぶりで、オーケストラや歌手たちを煽る感じはない。スケール大きな鳴りっぷりだけど、大きなうねりは感じられないし、迫力もさほどではない。
場面に応じたしなやかで柔軟な表現が際立つ。ディテールが鮮明に、ニュアンスたっぷりに描き出されていく。歌手たちとの細やかなコンビネーションを楽しめる。
ただ意識してそのように演出している感じではない。余裕のあるテンポで密度のあるアンサンブルをやっ繰り広げたら、なるようになっただけ、みたいな感触。
結果として舞台上の出来事を支配しているけれど、君臨するのではなく、歌手たちを支え、包み込むような指揮ぶり。
1956年や1958年の音源には、クナッパーツブッシュの自己主張が聴かれたが、この音源はあるがままにやっている感じで好ましい。
::::::::::
この楽劇を、激しく濃い情念の物語と捉えるなら、クナッパーツブッシュの指揮ぶりは物足りないかも。
1956年の方がより力強いけれど、ゴツくなった感じで、情念が渦巻く感じとは違う。そして、1958年の方は、この音源よりもっと淡白になっている。
一連のバイロイトでのライブ録音を聴く限り、大指揮者の存在感みたいな要素を除外して、楽曲の面白さを堪能させてくれるという意味で、決定的な演奏は見当たらない。
コメント
コメントを投稿