アントニオ・メネセスによるバッハの無伴奏チェロ組曲(2004)

アントニオ・メネセスの独奏。2004年のセッション録音。


 

メネセスは1957年ブラジル出身のチェロ奏者。1993年にも、この組曲を全曲録音している。



良く言えば平明で中庸だけど、この演奏はそういうのを通り越して、平穏すぎるかもしれない。

入念だし集中力を感じる。そして、技巧は優れている。でも、終始、表情は平明で、耳のあたりが柔らかい。

たとえば、難度が高い第6組曲では、速めのテンポでかつメリハリが明確だけど、まったくアグレッシブに聴こえない。 

聴き手に何らかの影響を及ぼそうとする“欲”を感じない。
「他人の耳にどう響くか」みたいな自意識を手放して、ただただ音楽とともにある、みたいな風情。

こういう気負いのない自然に風合いが魅力だけど、単に面白みが乏しいと片付けられかねず、紙一重だ。



軽めの音の出し方で、流暢に進める。メリハリはあって細やかだけど、いずれもほどほど。表情の彫りは深くないし、スケール感みたいなものは感じない。

しかし、技術の高さが、そのまま細やかかつスムーズな表現につながっていて、練られた上質感がある。

音色は、落ち着いた色調ながら、ほんのりと艶がある。



チェロでは、音の粒立ちを整えるに、ちょっとしたタメを挟むものらしいが、やり過ぎると歩調がギクシャクしてしまう。

メネセスは、そういうことを感じさせない。良くも悪くも、チェロらしさを必要以上にこちらに意識させることなく、音楽自体の自然な流れを聴かせてくれる。

そういうことのために、技術が駆使されているような演奏。

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