サヴァリッシュによるワーグナー歌劇『ローエングリン』


好感度 ■■■■■

ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮、バイロイト祝祭管弦楽団その他の演奏。

1962年のライブ録音。
サヴァリッシュ(1923年生 - 2013年没)38歳頃の録音。

彼は1957年〜1962年にかけてバイロイト音楽祭に出演。『オランダ人』『タンホイザー』『ローエングリン』『トリスタンとイゾルデ』を指揮した。

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サヴァリッシュは好んで聴く指揮者ではないけれど、これは数少ない例外。

この指揮者らしい、楽曲の構造や書法を明晰に聴かせるアプローチだけど、後年のスタイルに比べると、もっと飾り気がない。素材の質感をそのままにしている。耳あたりを良くするための加工を施していない。

まだクナッパーツブッシュが出演していた時代だから、この方がサヴァリッシュのキャラはより鮮烈に映ったかもしれない。「ありのままの音楽をやっています」感が強い。
この飾り気のなさが、この音源ではとりわけ新鮮に響く。

それに加えて、多彩と勢いの絶妙のバランス。
颯爽として推進力が優勢だけど、各場面の情景はきっちり描き出されている。あっさりだけど、味付けはしっかりしている。

もっとも、耽美を求めるなら他を当たったほうが良いだろう。
サヴァリッシュは、そういう色の付いた作品像とは一線を引いて、指揮をしている。

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サヴァリッシュは、自分のスタイルの核心部分をオーケストラに徹底するけれど、細かく統制すのではなく、程よく解放し、ときに煽るような統率ぶり。

伝統ある音楽祭の中の若手指揮者という状況が、そういうやり方を彼に強いたのかもしれないが、この音源では、すべてが良い方向に向いている印象。

“分析的”なタッチをベースにしつつ、そこに熱気とか勢いとかが違和感なく相乗している。
明解さと熱気が噛み合って、何度聴いても爽快に仕上がっている。

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