オイストラフとクレンペラ-によるブラームスのヴァイオリン協奏曲

ダヴィド・オイストラフとオットー・クレンペラーによる1960年のセッション録音。
管弦楽をフランス国立放送管弦楽団が務めているのは、クレンペラーのセッション録音としては珍しい。
といっても、クレンペラー自身は、戦中〜戦後にかけて、欧米のオーケストラを渡り歩く生活をしていたようだから、勝手がわからないはずはない。
実際、この演奏では、オーケストラの柔らかくて明朗な響きと、クレンペラーの持ち味を、驚くほど融和させている。
* * * * *
そういうことを含めて、わたしにとっては、クレンペラーの芸を楽しむ音源。
クレンペラーの伴奏物の録音(セッション録音でもライブ録音でも)を聴く限り、彼は決してソリストの音を塗りつぶすようなマネをしない。ソロと管弦楽が一体となって音楽を作り上げるという、いたって常識的なスタンスを堅持している。
ここでもその流儀は堅持されているけれど、とても彫りの深いスケールの大きな表現を展開していて、この管弦楽に見合うソロを務めるのは難事だろうと思う。
そういう意味で、オイストラフの骨太で伸びやかな美音と盤石な表現力があればこそ成立した演奏かもしれない。
だから、オイストラフの実力はしっかりと伝わってくるけれど、彼の自発性が強く表れた演奏かというと、微妙な気がする。
* * * * *
開放的な響きで壮大なサウンドイメージが繰り広げられる第一楽章。オーケストラの柔らかなアンサンブルを積極的に活かすクレンペラーをバックに、オイストラフがしっかりと歌い上げる第二楽章。
第三楽章は、やや感銘が落ちる。クレンペラーの方向性が曲想に合っていないような気がするけれど、それは置いておくとしても、肝心の主題のところでオーケストラが乱れる。オーケストラの性能がどうこうと言うより、録り直せば何でもないのに、それをしなかったような・・・
コメント
コメントを投稿