ゲルギエフによるショスタコーヴィチ交響曲第7番『レニングラード』(2001年)
ワレリー・ゲルギエフ指揮、管弦楽はキーロフ歌劇場管弦楽団とロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーによる混成オーケストラ。
2001年の録音(ライブからの編集)。
ゲルギエフは、1953年ロシア出身の指揮者。
彼は1988年からキーロフ歌劇場管弦楽団(現マリインスキー劇場管弦楽団)を率いている。
また、1995〜2008年の間、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務めた。
なお、2012年に、マリインスキー劇場管弦楽団とこの曲を再録音している。
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磨かれた音響美と壮麗なサウンドイメージが、とにかく印象的。
ロシア出身の指揮者にとって、シリアスに描きたいタイプの楽曲ではないかと思うのだけど、良くも悪くも、しがらみ的なものは断ち切られていて、純粋に音楽的な造形物として作り込んでいる。
そして、ゲルギエフの手腕は驚異的。明確なイメージがあって、それを的確にオーケストラから引き出している感じ。
混成オーケストラによる演奏だそうだが、音楽性のブレみたいなものは感じられない。
しっとり系の響きに磨かれたアンサンブル。この曲をシリアスなドラマとして聴きたい人には、不謹慎と感じられるかもしれないほど色彩的でソフトな耳障り。
そして、曲想に合った壮麗なサウンドイメージも見事。
第一楽章の怒涛のクライマックスでも、各パートの音量を制御して、ディテールの表現を明確に色づかせる。威嚇的な音や響きの混濁は徹底排除されている。
それでいて、音楽は決して薄くも小さくもならない。
編成の大きなーケストラの量感ある響きをベースに、多様で立体的なアンサンブルが展開される。のけぞるような迫力は感じないが、要所要所でキレのある一撃やリズムの変化などが繰り出されるので、十分に盛り上がる。
終楽章のエンディングでも、この演奏の特徴が顕著に表れている。
もちろん盛り上がるけど、勝利の雄叫びと言うより、古の戦記物語のクライマックスのようなタッチ。
生々しさを感じさせない弦の歌わせ方・響かせ方、伸びやかでけたたましくない金管。
ただし、最後の最後でティンパニがドドドドと畳み掛ける。
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ヘルベルト・フォン・カラヤンの最大の功績は、本場出身の指揮者でありながら、独墺系のレパートリーをローカルな価値観から解き放ったことにあると思う(それが良かったかは別にして)。
このゲルギエフの演奏にも、それに近いものを感じた(二人の演奏自体は似ていないけれど)。
歴史的背景とかは脇において、壮大な音響の絵巻物語を素直に楽しみましょうよ、みたいな。
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