ブダペスト四重奏団によるベートーヴェン弦楽四重奏曲第15番(1952)

好感度 ■■■■■
1952年のセッション録音。
ブダペスト四重奏団は、1951~1952年にモノラルで、1958~1961年にステレオで、2回全集を録音している。
この音盤は、レーベルのオリジナル・マスターテープではなく、アナログ盤に拠ると思われる。
ただ、コロンビアの古い録音だと、メリハリを強調した不自然なものであろうから(根拠のない想像)、程度の良いアナログ盤に拠ると思われるこの音盤にも、嗜好品として一定の価値はあるかもしれない。
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引き締まった造形で、端然としている。気分や思い入れによる造形の歪みを一切排除する構え。
締りのある造形は、全体に程よい緊張感を及ぼしているけれど、スポーティーな快適さというのではない。
1961年のステレオ録音も、辛口の引き締まった演奏ぶりだったけれど、こちらの音源に比べると、けっこうほぐれている。
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各パートの線の動きにも緩みはないけれど、それぞれの表情には潤いとか陰影がある。
感情や気分に流されることはないけれど、積極的に感情表現している。
造形を歪めるような大きな身振りはないけれど、音の強弱、呼吸感、アンサンブルの色合いの変化みたいなものに細心の注意が払って、結果的に雄弁に仕上げている。
そんなところに、このグループの底力とかクォリティを感じる。
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特に、全曲の中核をなす第三楽章は、小気味よく15分台で演奏されているけれど、ヴィブラートを多用して、感情のヒダを聴かせる。
普通、これだけヴィブラートを使われるとしつこくなりそうだけど、素っ気ないくらいに潔い造形との兼ね合いでは、表現技法として有意義に聴こえる。
この楽章の、印象的な演奏の一つに仕上がっている。
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